うたごえの戦後史 作者: 河西秀哉出版社/メーカー: 人文書院発売日: 2016/10/31メディア: 単行本この商品を含むブログ (3件) を見る 河西秀哉『うたごえの戦後史』(人文書院、2016年)を読了。戦後の合唱運動が戦前・戦中の厚生運動から思想的においても関わる人物の点でも地続きであることをはじめとして面白い話が数多い。戦前は全体主義に奉じる国民の育成のために、戦後はいわゆる「戦後民主主義」に適した「近代的な市民」の教育のために、ほとんど同じロジックを展開しつつ、全国的な合唱運動が組織されたわけだ。また、共産党の影響下で政治色が強かったうたごえ運動とか、あるいは日本独特の「おかあさんコーラス(ママさんコーラス)」のような敗戦から高度経済成長までの合唱運動に関する記述もきわめて興味深い。求められる役割、あるいは合唱が奉仕すべき対象を少しずつ変えながらも合唱運動は脈々と続いてきた。