戸田郁子 作家、翻訳家 photo: Sako Kazuyoshi 復刻本が上位に並んだ。 尹東柱の『空と風と星と詩』は3冊セット。1948年の薄い初版本、1955年の厚い増補版。「歴史在中」と書かれた白いノートを開くと、400字詰め原稿用紙に詩人の筆跡がある。後ろには、「昭和19年京都地方裁判所」の判決文(影印)と、韓国語訳が。 縦書きで、漢字も多い。韓国の若い世代には、決して読みやすくはないはず。しかし韓国で「国民詩人」と愛される詩人の詩を、暗唱できる人も少なくない。かすれた活字を一字一字指で追いながら、胸ふるわせて読む読者も多いのだ。 若き詩人は京都で捕らわれ、26歳のときに治安維持法違反の罪で懲役2年を宣告された。それから1年足らずで、収監先の福岡刑務所で獄死した。 弟の尹一柱氏による後書きの文字をたどった。「2月16日東柱死亡 死体持っていけ」という日本からの電報に、驚愕(きょう