1980年に出版した岩崎書店の人気作品『はれときどきぶた』は児童文学のロングセラー作品として今でも多くの子供たちに読みつがれています。なぜ、子供たちの心を掴み、本を読むのが苦手な子供たちにまで人気が広がり、「はれぶた」旋風がおこったのか。このシリーズができるまでの道のりや作品に込められた思いなど、作者の矢玉四郎さんに当時のお話を伺いました。 昭和54年(1979年)3月のこと、貧しい青年が、飯田橋の駅から神田川ぞいに歩いて、文京区水道にある岩崎書店に、童話原稿の売り込みにやってきました。他社で「うちは厳選主義だから」などといわれて断られたあととあっては、足取りも重く、ドブ川の澱んだ水のような気分でした。 古びた木造の社屋のガラス戸を開けて、日高充宣副編集長に『じろきちおおかみ』と『はれときどきぶた』の原稿を見ていただいたところからが、物語の始まりです。 以来、岩崎書店90年のうちの半分近く