旅行中に、飛行機が遅れて、憤懣やるかたなかった――。もしそんな経験があったら、次に遅れたときには、19世紀に人々がどのように旅したかを思い出すと、多少気分がまぎれるかもしれない。 あなたはたぶん、ロシアの画家、イリヤ・レーピンが描いた『ヴォルガの船引き』(1870年~1873年)をご覧になったことがあるだろう。 絵に描かれた男たちは、なぜ、こんな仕事をやっているのだろうか?なぜ、この疲れ果てた男たちは、奴隷さながらに、船を上流に引っ張っていくのか? なぜ、気の毒な若者たちは、外輪船や帆船を使わないのか?ひとつ調べてみよう。 船引きとは何者か? ロシア語で「ブルラーク」と呼ばれる、彼らの主な仕事は、川の流れに逆らって、つまり上流に向かって、帆船を引っぱっていくことだった。ふつう、彼らは、全長30〜50メートルの平底貨物船を引いた。これは、秋と春の季節労働であった。 たまたま順風が吹いたときは