本連載について AIの社会的影響について考え始めたのは、8年ほど前。当時は「ブームだしちょっと考えてみよう」というつもりだったが、社会的の関心は落ち着くどころかどんどん大きくなっていき、私自身も考え続けることになった。いまでは、AI関連の新聞記事に目を通すのが日課になってしまった。 「AIと社会」に関してどんな論点があり、何を知っておくとよいのか。すでに膨大な文献があるのは承知しているが、自分なりの考えを文章にしておきたい。「AIと社会」思考整理ノートと題した、2~3回の連載をやってみる*1。 第1回は、AIがもたらす「問題」について考える。 Vol.1:AI問題のタクソノミー AIと社会の関係、とりわけその負の側面に関する議論は、たいてい「問題の列挙」から始まる。人工知能(AI)という用語でくくられる技術範囲は広く、大規模言語モデルや強化学習など技術の範囲に絞っても、その応用範囲が広く、