※この記事では国立国会図書館デジタルコレクションの画像を適宜改変して使用しています。 和文教科書. 7之巻 宇治拾遺物語ぬきほ - 国立国会図書館デジタルコレクション 【原文】 りて、此の女を呼びければ、出で来にけり。 旅人、問ふ様《やう》は、 「此の親は、もし、易の占ひと言ふ事や、せられし」 と問へば、 「いさ、さや侍りけん。其のし給ふ、様《やう》なる事は、し給ひき」 と、言へば、 「さるなる」 と言ひて、 「さても、何事にて、千両金負ひたる、其の辨《わきま》へせよとは、言ふぞ」 と問へば、 「己《おのれ》が親の、失《う》せ侍りし折に、世の中に在《あ》るべき程の、物など、得させ置きて、申しし様《やう》、 『今なん十年有りて、その月に、此処《こゝ》に、旅人来て、宿らんとす。其の人は、我が金を、千両負ひたる人なり。それに、其の金を請ひて、堪へ難からん、折は、賣りて、過ぎよ』 と、申しゝかば、