現在米国では、量的緩和政策の出口戦略のタイミングをめぐる議論が活発だ。だが議論のどのような点に注目すればその適切さが判断できるだろうか? 日本では、政策金利がゼロに誘導され中央銀行の準備預金が法定額を大幅に上回る状態を誘導する政策(以下これをQEという)が既に3回目に入っており、米国や英国よりもずっと経験が長い。欧米の政策決定には、過去における日本の経験から学べることがあるかもしれない。 そこで、日本における前回のQE解除時点では何が起こったのかを考えながら、最新の分析手法 を駆使して検討してみよう。 筆者らの分析(林文夫・一橋大学教授との共同論文“Exiting from QE”,NBER working paper 19938, National Bureau of Economic Research.Inc, 2014)は、2011年にノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ