深く深く共感する文章と出合った。 新潮9月号に掲載された養老孟司「追悼河合隼雄 取り返しはつかない」である。 河合隼雄さんの訃報を聞いた。病床におられることはわかっていたし、多くの方と何度か河合さんの病気の話はしたから、いまさら驚くことではない。ただなんとなく腹立たしい思いがないではない。なぜ文化庁長官なんか、長いことやらせたのか。 高松塚古墳の絵にカビが生えたという問題があって、河合長官が頭を下げてまわったという話を、風の便りに聞いたような気がする。そんなことがなくても、そもそも他人のストレスを解消するのがお仕事だった。 もったいないなあ。この世間は本当にもったいない人の使い方をする。 河合さんのように滅多にない才能をバカな仕事に使いやがって。ついそんな気がしてしまう。 この世間で好きな仕事をしようと思ったら、必要なことはするしかないが、義理は欠くしかないということである。司馬遼太郎は「