「なんて恐ろしい! こんなものは宮内庁の中でも、ごく一部の人しか知りませんよ。私に見せないでください!」 ある宮内庁関係者は、声を震わせながらこう言った。 「こんなもの」とは、表紙に「内廷会計歳出予算概算要求書 侍従職」と書かれた、昭和44年度と45年度の2冊の分厚い文書のことである。どちらも、わら半紙にガリ版で刷られたものだ。 そこには、購入予定の品名と、それらにかかる金額が、何ページにもわたって整然と並べられている。例えば45年度には以下のような品目がある。 〈背広/7着/単価65000円/要求金額455000円〉 〈ポータブルテープコーダー/1台/要求金額39800円〉 〈ヘアトニック/20本/単価500円/要求金額10000円〉 〈ベープマット/3箱/単価330円/要求金額990円〉 「内廷」とは天皇家や東宮家を指す。また「侍従職」とは宮内庁の中にあり、天皇・皇后に側近として仕える