「最期は住み慣れたわが家で死にたい」。病院ではなく、家なら穏やかな最期を迎えられる──そんな在宅医療「礼賛」の記事や番組がたくさんつくられてきました。しかし、現実は必ずしも理想通りではないことを痛烈に指摘した本『痛い在宅医』(ブックマン社)が刊行されました。その著者が、「在宅死」を推奨してきたカリスマ医師、長尾和宏さんであったことも驚くべきことでした。 兵庫県尼崎市で20年以上にわたり在宅での看取りに取り組み、『「平穏死」10の条件』など多くの著作を世に問うてきた長尾医師に、医療現場に詳しいジャーナリストの鳥集 徹さんが「在宅医療のリアル」を聞きました。 ◆◆◆ 鳥集 『痛い在宅医』を拝読しました。末期の肺がんのお父様を総合病院から引き取られて、ご自宅で看取られた女性の話です。彼女は長尾先生の本のファンで、在宅で看取れば苦痛なく、穏やかに見送れると思っていた。ところが、在宅医は初診時に自宅