ドイツW杯予選オマーン戦のロスタイムの決勝弾、 欧州遠征で強豪チェコを下した衝撃的なゴール。 記憶に残る得点を量産したストライカーは、 今年、静かにユニフォームを脱いだ。 口下手な男が語る、引退、そして日本代表――。 不慣れでちょっとたどたどしい。 「ゴール前に向かうときはボールから目を離したらダメ……。絶対にいかんよ!」 広島県、廿日市。海と山に囲まれた自然溢れる町に、日本中の期待を集めながらW杯の舞台を踏めなかった元日本代表、36歳の久保竜彦はいた。4月からNPO法人「廿日市スポーツクラブ」のストライカー養成コーチに就任し、子供たちに愛情を持って教えている。 “ドラゴン”という愛称で親しまれた久保はJFLのツエーゲン金沢から戦力外通告を受け、17年間の現役生活にピリオドを打った。JFL、県地域リーグ、タイのクラブなどからも誘いの声がかかったが、妻と2人の娘が待つ広島へ戻ることを選んだ。