実際には何も食べないのに「文字を食べる」という習俗もあります。 たとえば、舞台などに上がるとき「人」という文字を手のひらに3回書いて、食べる(飲む)仕草をすると度胸がつく、というおまじないがあります。 今でも落語家や芸人がよく本番前にやることのようです。 昭和の大名人・八代目桂文楽も「人」の字を手のひらに書いてから高座にのぼったといいます。 歌手の越路吹雪は作詞家で友人の岩谷時子に、ステージ前に背中に「虎」の字を指で書いてもらっていたというエピソードが残っています。 古くからある文字信仰のひとつなのでしょうが、江戸時代の歌舞伎役者初代・中村仲蔵もこの仕草をやっていたとされていることが、芸能の世界で広まったきっかけのようです。 また、歌舞伎の「助六」には「俺の名を手のひらに三べん書いてなめろ。一生女郎に振られることがねえ」という台詞が出てきます。 「文字を食べる」ことについての逸話は、古くか