カート・ヴォネガットの没後9年を経て、今また新刊が編まれて邦訳まで出版されることはとても悦ばしい。そういうものだ。翻訳は円城塔、帯には糸井重里という布陣で、新しい読者にも届くことが期待できる。これからも多くの人にヴォネガットの小説が読まれて欲しい。 これで駄目なら posted with KinoMyLink ヴォネガット,カート【著】/円城 塔【訳】 紀伊國屋書店ウェブストアで詳細を見る ただこの邦題には違和感を持った。 原題はIf This Isn't Nice, What Is? 。本文ではこのように訳されている(p.47)。 これで駄目なら、どうしろって? 意味は損なっていないし、日本語として自然だ。だが、「駄目」というネガティブワードが気になる。原文は nice というポジティブワードの修辞疑問文だ。心優しきニヒリスト、皮肉屋のヒューマニストであるヴォネガットの言葉として適切だろ