これから、昭和レトロな春樹ワールドを探求しようと思う。「えっ? 村上春樹が昭和レトロ?」と不審に思う方もいるかもしれない。 だから、本題に入る前に、この原稿を書くに至った経緯を少し書くと、最初は「すっぴん!」というラジオ番組の新刊コーナーで、ゲーム作家の米光一成と翻訳家の鴻巣友季子が村上春樹の『騎士団長殺し』を紹介したが、番組後もふたりの話は尽きず、だったらトークイベントで存分に話そうということになり、下北沢の本屋B&Bで2時間のトークをやったところ、じゃ、せっかくなので、これの全記録を電子書籍にしようという運びになり、急きょ作られたのがこちらの『村上春樹「騎士団長殺し」34の謎』であります。 「昭和サラダ問題」のはじまり そのトークイベントの質疑応答で、こんな質問が出たのだった。 「主人公がよく拵えるサラダが昭和のサラダでびっくりしました。レタスとトマトとピーマンの輪切りと玉ねぎのサラダ