人を殺してはいけない絶対的な理由などない。 したがって、人を殺していけない理由をもっともらしく述べる人間はすべて嘘つきである。 たとえそれが、人類史上もっとも偉大な倫理学者のご立派な理論であろうとも、一切はインチキなのである。 そして、「なぜ人を殺してはいけないのか?」と問う人間は、多くの場合、「人を殺してはいけない絶対的理由」を尋ねている。すなわち、存在するわけもない理由について尋ねている。もしくは、それが存在しないということを相手に認めさせようとしている。 この質問が、「人を殺してはいけない絶対的な理由」が存在しないことを認めるわけにはいかない立場の人間に対して投げかけられたのなら、それは、質の悪い質問というより、頭の悪い質問である。 そもそも、世の中には、「人を殺すことは悪いことだ」と理屈抜きに「感じる」人たちがいる。「なんでその女の子が好きなの?」と訊かれて、いろいろ理由を説明して