『アリエナイ医学事典』(三才ブックス公式オンラインショップより) 「なぜ一自治体の判断が、世界最大の通販サイトであるAmazonに影響を及ぼすのか?」「鳥取県で本を売ること自体、もはやリスクといえる」 三才ブックス(東京都)の『アリエナイ医学事典』『裏グッズカタログ2022』などの書籍3冊が今年2月、著者や出版社に知らされることなく通販大手Amazonのホームページから削除され、事実上、流通できなくなった。 3冊の編集を担当した三才ブックス『月刊ラジオライフ』編集部が中心になって、Amazon側に理由を問い合わせたところ、「鳥取県がこの3冊を有害図書に指定したこと」「有害図書を販売業者の所在地に関係なく禁止対象としていること」と回答があったのだという。三才ブックスは公式サイト上で、『月刊ラジオライフ』10月号に掲載されていた鳥取県やAmazonとのやり取りに関する経緯を掲載。同記事で冒頭の
「Getty Images」より 東京都教育委員会は、都立高校・学校図書館の民間委託を来年度から見直す方針を固めたことが、このほど関係者への取材でわかった。 まだ予算案発表前のため詳細は不明だが、関係者によれば来年度からは新たに都立高校学校図書館の民間委託への転換は行わず、その部分については、学校司書を直接雇用とするための予算要求を盛り込むものとみられている(民間との契約も残しつつ、直接雇用で司書を補充する方針)。 役所のあらゆる業務の民間委託が急速に進むなか、なぜ都教委は、たとえ一部分とはいえ学校図書館を直接雇用に戻す決断を下したのだろうか。 「現時点で違法性を完全に排除できないため、都立高校の学校図書館をこれ以上、民間に任せられないということです」 そう話すのは、9月の東京都議会でこの問題を追及した都民ファーストの会の米川大二郎都議会議員(都市整備委員会委員長)だ。米川都議が問題視した
10月18日、「大分大学のガバナンスを考える市民の会」主催のシンポジウムの模様 大学の権力的支配を許していいのか――。 全国の大学で「大学改革」の名のもとで学長への権限集中が進められ、教員の意思が軽んじられているとして、大学運営のあり方を考えるシンポジウムが10月18日、大分市で開催された。 報告されたのは2つの国公立大学の現状だった。ひとつは大分大学。2015年に学長の任期上限と、学長選考の教員による意向投票が撤廃された。その結果、学長に権限が集中し、昨年には経済学部長の選考をめぐり学長が教授会の意向を無視して学部長を決めたほか、医学部の教授採用でも学長が教授会が選んだ候補者とは別の人物を採用した。大分大学の問題については、『大分大学、学長“独裁化”で教授会と内紛』に経緯を書いた。 もうひとつの報告は下関市立大学。安倍前首相の元秘書である前田晋太郎下関市長によって「私物化」が進められてい
5人の解雇無効に「勝訴」を掲げる原告団 2020年7月21日 奈良地方裁判所前 大学を運営する法人の不手際によって、学部再編が失敗したにもかかわらず、既存の教員を解雇することが許されるのか――。学部の再編や統廃合が今後進むことが予想される私立大学の教員にとって、今後を左右しかねない裁判の一審判決が今年7月、奈良地方裁判所で開かれた。 被告は奈良学園大学を運営する学校法人奈良学園。原告は、奈良学園大学で教授などを務めていた元専任教員6人と、再雇用で勤務していた教員2人のあわせて8人。8人は2017年3月末に大学を解雇され、翌月、地位確認などを求めて奈良学園を提訴していた。翌年、原告の1人は他大学に職を得て訴訟を取り下げた。 3年にわたる審理の結果、判決では再雇用の元教員2人の訴えは退けられたものの、奈良学園に対し5人の元専任教員の解雇無効と、あわせて1億2000万円以上の支払いを命じた。 し
東京大学(「Wikipedia」より/Kakidai) 8月に実施される東京大学大学院の2021年度入試において、筆記試験と口述試験がオンラインで行われると発表された。新型コロナウイルスによる社会情勢を踏まえてのことで、受験生は自宅などで答えることになる。この新たな試みに関して、大学通信社常務取締役の安田賢治氏から聞いた。 「正解が準備されているような一般的な試験ではなくて、問いに対して自らが解答を考え出すような、記述式の試験になると思います。似たような考え方の試験としては、お茶の水女子大学のAO入試で、新フンボルト入試というをやっています。1次試験はプレゼミナールを受けてのレポート提出。2次試験は大学の附属図書館で行われるんですが、そこにある文献や資料をどれだけ見てもいい。知識の量を測るのではなく、それをいかに応用するかを問うわけです。 東大大学院のオンライン入試も同じ考えで、ウェブなど
みなさんは「大阪」と聞いて何を連想するだろうか。おそらく、「大阪のおばちゃん」「たこ焼き」「グリコの看板」「吉本新喜劇」「関西弁」などが多いだろう。筆者は、一昨年末にこれらのイメージを胸に大阪に転居した。しかし、実際に住んでみて「たこ焼き」ばかりが大阪のグルメではないし、「大阪のおばちゃん」ばかりが大阪の女性ではないという、当たり前すぎる事実に衝撃を受けた。 そのような紋切型の大阪論を「つくり物の大阪的イメージだ」と指摘するのが、『大阪的 「おもろいおばはん」は、こうしてつくられた』(幻冬舎)著者の井上章一氏だ。なぜ大阪的イメージが広まり、本当の大阪の姿とはなんなのか。建築史家、風俗史研究者、国際日本文化研究センター教授である井上氏に話を聞いた。 大阪は不当に貶められている? 本書の中で、井上氏は「大阪のおばちゃん」「大阪はエロい街」「接待は京都で、大阪ではたこ焼きを」といった世の中に出回
労働契約法の改正によって、大学の非常勤講師が5年以上勤務した場合、無期雇用に転換する権利が得られるはずが、慶應義塾大学などが10年以上勤務しないと権利が生じないと強硬に主張していることを指摘した(『慶應大学と中央大学、非常勤講師の労働契約で違法行為…5年での無期雇用転換を拒否』)。 その後、この問題について大きな動きがあった。同じように10年以上の勤務が必要と主張していた東京大学が、約2800人の非常勤講師に対して、5年以上の勤務で無期転換を認める決定をしたのだ。 東京大学の決定は、違法行為を続けている大学に影響を与える可能性がある。その経過を見てみたい。 東京大学が就業規則の誤ちを認める 「東京大学は、非常勤講師については10年以上たたないと無期転換の権利が発生しないとする教員任期法の趣旨に合わないと明言しました。違法行為を続けている大学に対して、この考えを普及させて、円満解決を図ってい
ここには、刊行年度の古い本がズラリと並んでいる。これも中古本の選書リストの一部と思われるかもしれない。だが実は、これは多賀城市立図書館がツタヤ図書館としてリニューアルオープンする前、昨年4月に決裁された除籍(廃棄)本リストの一部分である。 この除籍リストをみると、ほとんどは雑誌のバックナンバーで、単行本の除籍は少ないが、その単行本には生活・実用書がズラリと並んでいる。 注目したいのは、いつ発行の本かだ。この除籍本の「受入日」(実質的には刊行年)をみると、1990年代もあるが大半は2000年代だ。前回記事で紹介した選書リストの料理本に数多くの90年代出版のタイトルが並んでいたのと比べたら、むしろ廃棄した本のほうが新しいくらいである。 市民の貴重な税金で購入する本が、廃棄した本より古いというのはどういうことなのか。これから購入しようとしている本のリストと、不要として廃棄した本のリストの見分けが
「事前の説明なんか何もないですよ。卒業式前日の3月17日お昼頃でした。突然、『職員室に取りにきてください』と校内放送があって、バタバタと生徒に配っただけです。生徒には1枚の案内がついていましたが、担任の教師にはそれすら渡されませんでした」 そう憤慨するのは、宮城県・多賀城市内にある小学校の女性教師である。生徒に配布されたのは、「読書通帳」なるシロモノ。最近各地の公共図書館で導入され始めている読書推進ツールなのだが、“ツタヤ図書館”で配布されたとなると、話は少しややこしくなってくる。 それにしても、小学校の教室で生徒全員に配布されるのに、担任の教師がその内容について一切知らされないということがあっていいのか――。 読書通帳で子供の読書習慣向上に寄与 レンタル店「TSUTAYA」を全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が運営する公共図書館、通称・ツタヤ図書館。宮城県多賀城市立
アマゾンジャパンは1月28日、東京・目黒の目黒雅叙園に販売契約協力している出版社などを集めて、2016年の方針説明会を開催した。 「説明会では、『YES 直取』という合言葉を掲げて直取引の説明をしていましたが、直取引の拡大が最大のテーマでした。なんと現在より直取引出版社数を2倍にしたいというから驚きです」(出席した出版社社員) アマゾンが直取引の拡大をテーマに掲げていることは知られているが、日本に上陸してから間もなく、「e託販売サービス」というシステムを導入して、出版社との直取引を始めていった。当時のバイスプレジデント、ローレン川崎氏が慣れない日本語で「ちょく、とーりひーきー」と出版社を前に挨拶したのも懐かしい話だ。導入から約10年近くが経った今になって、アマゾンはまた「直取引の拡大」を大声で叫び始めた。 「昨秋頃に、アマゾンはベンダーセントラル(出版社への販売支援システム)に登録する出版
2015年11月末、京都市上京区の鴨川にほど近い住宅街に、一軒の書店がオープンした。お店の名前は誠光社。売り場面積20坪弱のこの小さな書店が、出版業界全体にイノベーションをもたらそうとしている。店主を務める堀部篤史氏は、関西随一の名物書店であり、英ガーディアン紙による「世界の素晴らしい書店ベスト10」にも選ばれた、恵文社一乗寺店(京都市上京区)で13年間店長を務めた人物だ。 アマゾンや大手書店チェーンに押され、街の書店が減少し続けている現在。新刊書店の新規オープンも少ない。堀部氏はそれらの理由として、既存の流通構造に問題があると指摘。街の書店が生き残る術として“直取引”という方法を採用し、動き出した誠光社の取り組みに迫った。 理想的な書店を実現 出版業界の流通は、出版社がつくった本を、取次が全国の書店に配本する仕組みだ。取次はいわゆる卸問屋の役割を担っている。しかし、取次を経由するとマージ
Ustream番組『UstToday』出演中のUstream Asia社長・中川具隆氏(13年)。この時はUstreamの広告塔として、番組やセミナーの出演を積極的にこなしていた。 インターネットサービスの栄枯盛衰は、あまりにスピードが速い。5年前に時代の寵児となったライブ動画配信サービス・Ustreamが、2016年1月にひっそりと日本での展開を終える。 12月1日にソフトバンクの子会社・Ustream Asiaが、アジアでのサービスを本国アメリカのUstream, Inc.に移行すると発表した。Ustream Asiaは日本・韓国を含むアジア地域でのサービスを独自にカスタマイズし提供していたが、これをアメリカに返すかたちだ。 一言でまとめれば、Ustream日本法人の撤退、だろう。Ustream自体は今後も日本から利用できるが、ソフトバンク子会社が提供してきた日本語トップページや、日本
次々にやって来た「黒船」は、テレビの何を変えるか――。 民放テレビ局5社は10月26日、テレビ番組を無料で見られるサービス「TVer(ティーバー)」をスタートさせました。インターネット上で各社が週に10番組程度の最新コンテンツを広告付きで配信するというものです。 背景には、各社が試みた有料のオンデマンド・サービスがいまひとつの状況であることに加え、「dTV」や「HULU」など国内の定額動画ストリーミング・サービスがスタートし、6500万人のユーザーを抱える同分野世界最大の「Netflix(ネットフリックス)」、さらにネット通販世界最大のアマゾンがプライム会員に無料見放題という破格のサービスで上陸してきたことへの危機感があるのではないでしょうか。 下手をすると、これらの定額ストリーミングにオンデマンド・サービスの主導権をとられ、番組を安く買い叩かれてしまいかねません。また、大化けする可能性を
10月1日付当サイト記事『ツタヤのCCC運営の図書館、不可解な図書購入めぐり疑惑浮上!在庫処分に利用?訴訟に発展』で、全国でも民間委託を最も積極的に進めている自治体のひとつである東京足立区のケースを例に、公共図書館がいかに「ワーキングプア」を大量に生み出す元凶となっているかをレポートした。 「民間に委託すれば、より少ない費用でより充実したサービスが受けられる」という考え方は、絵にかいた餅にすぎず、現実には受託した企業が利益を確保するために人件費を低く抑えているにすぎない。 館長を雇い止め~裁判~和解 今回は、さらに具体的事例を挙げて解説していこう。 「無理が通れば道理が引っ込む」と言われるように、足立区の図書館では、これまで2つの大きな労働事件が起きている。 まず、指定管理制度完全導入直後の2009年に足立区内の図書館で起きたのが「館長雇い止め事件」だ。 指定管理者となった企業に契約社員と
被害者遺族の反発もあり、その出版が批判されている『絶歌』。販売を自粛する書店もあるが、出版流通大手のトーハンが発表した週間ベストセラーでは総合1位を記録した(16日時点)。 神戸の児童連続殺傷事件の加害者である「元少年A」(32)=事件当時14歳=が出した手記『絶歌』(太田出版)に、轟々たる非難が起きている。本に対する評価は人それぞれだし、「こんなものは読みたくない」という人がいても当たり前。私が気になるのは、「遺族の許可なく出版すべきでない」「印税収入はすべて被害者に渡すための法律を作れ」などと出版に対する規制を求める動きや、行政が本の販売や購入の自粛を求めたり、貸し出し制限をする図書館も出るなど、表現の自由にもかかわる動きが出ていることだ。 置き去りにされた「表現の自由」 被害者の1人である土師淳君(当時11)の父親、守さんは、手記の出版に強く反発し、報道を通じて憤りのコメントを発表。
スポーツの世界では、良きライバル同士の対決があれば、見ているほうも盛り上がる。ビジネスの世界でも、トップ企業がチャレンジャーの挑戦を受けている業界は活性化する。 アパレル小売業では、トップのユニクロに対して、ファッションセンターしまむらや無印良品がライバル視されてきた。コンビニエンスストア業界では、昨年まで業界首位のセブン-イレブンと、同3位のファミリーマートの出店競争が話題になっていたが、結局、ファミマはセブンの牙城を崩せなかった。 しかし、インターネットショッピングの世界では、王者の「Amazon.co.jp(以下、Amazon)」に、ヨドバシカメラの通信販売サイト「ヨドバシ・ドット・コム(以下、ヨドバシ)」が果敢に対決を挑み、大健闘している。 「月刊ネット販売」(宏文出版)の調査によると、2013年度の「ヨドバシ」の売上高は650億円で、ヨドバシカメラの総売上高の9.4%を占める。家
2013年10~12月期の連続テレビドラマ『リーガルハイ』(フジテレビ系)は、平均視聴率18.4%(関東地区・ビデオリサーチ調べ、以下同)を記録し、大ヒットとなった。同ドラマは、依頼人に法外な弁護費用をふっかけ、平気で犯罪まがいの手法を取り、引き受けた弁護は一度も裁判で負けたことがない敏腕弁護士・古美門研介(堺雅人)と、真面目で正義感の強い新米弁護士・黛真知子(新垣結衣)がタッグを組み、法廷闘争を中心にストーリーが展開されるコメディタッチのドラマだ。12年4~6月期に放送された第1期の『リーガル・ハイ』(平均視聴率12.5%)、13年4月13日放送のスペシャル版がヒットし、第2期の放送となったものだ。 ドラマなので、当然現実との乖離はある。ドラマの最後に六法全書のイラストカットが出るが、そこに小さな文字で「実際の法律実務とは異なります」という但し書きがなされている。ドラマのテロップには、法
官民が出資する株式会社海外需要開拓支援機構、通称クールジャパン機構を中心として経済産業省が主導するクールジャパンは、安倍晋三政権の経済政策であるアベノミクスの成長戦略の「第3の矢」のひとつに盛り込まれた。 同機構はユネスコ無形文化遺産に登録済みの「和食」をはじめ、日本の伝統や生活文化、ファッション、アニメ、ゲームなどを手がける中小企業の海外展開を支援するための投資ファンドとして設立され、2013年11月25日から本格的に活動をスタートした。会長には元フジ・メディア・ホールディングス(HD)常務で現サンケイビル社長の飯島一暢氏、社長には元イッセイミヤケ社長で現松屋常務執行役員の太田伸之氏が就任した。2人ともアニメ、ドラマなどのコンテンツやファッションには通じているが、投資については専門外だ。 ●ファンド出身者が主導するクールジャパン支援機構 同機構のキーマンは、ファンドの運用を担うCIO(最
かつて図書館といえば、学習や調べ物をするための誰にでも開かれた空間(学校図書館など一部を除く)であり、学びの場だった。 しかし近年、飲食ができないことや、館内で携帯電話を使用できないことなどが利用者の不満を誘発し、さらに、限られた開館時間によって、働く人にとっては足が遠のく存在となった。働く女性が増えたいま、利用者のほとんどは子ども、学生、乳幼児連れの保護者となり、静かな空間という代名詞すら今は昔の話。 そんななか、今、少しずつ増えつつあるのが「会員制図書館」だ。2003年に、森ビルが運営する会員制図書館「六本木ライブラリー」が、六本木ヒルズ(東京・港区)にオープンした。10年が経過したいま、30代のビジネスパーソンを中心に約3,000名の会員が利用している。 森ビルは、10年7月には「平河町ライブラリー」(東京・千代田区)、今年7月には「アークヒルズライブラリー」(東京・港区)をオープン
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