asahi.com（朝日新聞社）：文学とは何か [著]イーグルトン - 漂流 本から本へ - ＢＯＯＫ

文学とは何か [著]イーグルトン[掲載]2010年7月4日[筆者]筒井康隆（作家）■触発された「唯野教授」 岩波書店から突然この本が送られてきて、同封の手紙を読むと大江健三郎氏から、この本をぜひぼくに送って読ませるようにという依頼があったとのことだった。当然大江氏はすでにこの本を読んでいて、真意は定かでないがぼくに読ませ、何らかのよき反応を抽出させようとしたのであったろう。「現代批評理論への招待」というサブタイトルのこの本はイギリスの批評家イーグルトンが、実にわかりやすく現代の文学批評の諸理論を概説した本であり、この本に触発されてぼくはのちに「文学部唯野教授」を書くことになるのだが、それがベストセラーになった時、この本の訳者である大橋洋一氏がわざわざ神戸のぼくの自宅までインタヴューに来られたのには恐縮してしまった。 ◇ 今この本を開くと、読み進めながらの自分がいかに興奮していたかは鉛筆で余