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ホセ・ドノソ「境界なき土地」書評 無意識と抗えぬ血が湧き出す|好書好日
境界なき土地 [著]ホセ・ドノソ 南米チリの作家ホセ・ドノソは前世紀の終わり頃に亡くなっている。作品... 境界なき土地 [著]ホセ・ドノソ 南米チリの作家ホセ・ドノソは前世紀の終わり頃に亡くなっている。作品が日本に紹介されたのは主に70年代のことだったが、他のラテンアメリカ文学者たちほどには人口に膾炙(かいしゃ)されず、どこか通好みの作家という印象が強いのではないか。 それもこれも、代表作『夜のみだらな鳥』の圧倒的なグロテスクさ、現実の変容ぶり、自由で複雑な語りなどによるだろう。確かにそれは、奇怪な有機体の中へ迷い込んだような錯覚を誘う大長編である。 今回訳出された『境界なき土地』は、まさに『夜のみだらな鳥』を書きあぐねていたドノソが、その“原稿用紙の裏に”書いたという伝説を持つ。難航する創作の合間にふと浮かび上がった世界を、デッサンするかのように。 舞台は小さな村の売春宿。訪れる乱暴者や権力者が“ヒロインの家族”を脅かし、魅了し、破滅に導く様が簡潔に、しかしひと筋縄ではいかない屈折の中で描か
2013/09/24 リンク