経済観測：コロナ禍の生活、柔らかな知恵で＝気仙沼ニッティング社長・御手洗瑞子 | 毎日新聞

「ひとによって状況がちがうでしょう。だから、なにを話しても角が立つ気がして。ふつうの会話が、一番むずかしいの」 そう打ち明けたのは、ラーメン屋でとなりに座った年配の女性だった。いまから数年前、東日本大震災の被災地ではまだ多くの人が仮設住宅に住んでいるころだった。彼女もまた、仮設住宅に住んでいるのだという。ひとくちに被災して仮設住宅に住んでいるといっても、境遇はさまざまだ。家族を亡くした人、無事だった人。仕事を失った人、失っていない人。 「家の再建が決まった人もいれば、まだの人もいる。だから、家族のこと、仕事のこと、家のこと、なにを話せばいいのかわからなくてね」。彼女は少し困ったように笑い、続けた。「それで、仮設住宅に小さな畑をつくったの。そこでみんなで野菜を育てはじめた。植物はいいわね。おひさまの光を浴びて、ただすくすくと育っていく。『あの芽が出たね』『キュウリが大きくなったね』って、みん

[taketake89]

”「ひとによって状況がちがうでしょう。だから、なにを話しても角が立つ気がして。ふつうの会話が、一番むずかしいの」そう打ち明けたのは、ラーメン屋でとなりに座った年配の女性だった”