今週の本棚：村上陽一郎・評 『未来の科学者たちへ』＝大隅良典、永田和宏・著 | 毎日新聞

（角川書店・1760円） 真の研究とは何か 至言の数々 一九九五年科学技術基本法が制定され、翌年から中央政府の施策として、研究開発推進に関して、五カ年毎の「基本計画」が実施されてきているが、第一期計画の柱の一つとして、社会・経済上のニーズに対応した研究開発というポイントが示された。この段階では、人文学は完全に無視されたが、最近の基本計画には、流行のイノヴェーションに繋（つな）がる研究推進のために、社会科学や人文学さえもが動員されて、社会ニーズ達成が金科玉条になりおおせている。 つまり、現代日本は、社会・経済上のニーズに適さない性格の研究には、およそ価値がないとする風潮にどっぷりと浸（つ）かってしまっているのである。

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“掬すべき内容満載だが、例えば大隅氏。講演後に発せられる定型的質問に、「研究に行き詰まったとき」、「失敗したとき」にどうすればよいか。若人が、そんな心配に気を取られている日常。どこか貧しくないか”