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[最強武道家の心・技・体]井上康生「俺は爆発する」(乙武洋匡)
7月。セミの鳴き声が、やけに憎たらしく聞こえる。何もせずとも、ぶわっと汗が出る。 「ぐはあっ。ぐは... 7月。セミの鳴き声が、やけに憎たらしく聞こえる。何もせずとも、ぶわっと汗が出る。 「ぐはあっ。ぐはあっ」 東海大学の武道場からは、男たちのくぐもった声が聞こえてきた。 湿気と熱気がまじりあう、むせかえるような空間。巨体がひしめく。入口からいちばん遠い壁際に、井上康生はいた。 100kgを超える学生たちを次々と指名しては得意の投げ技で畳に這わせ、また次の相手を呼んでは投げを見舞う。 全身から滴る汗。大きく開かれた口。疲労は色濃く見てとれるが、畳から降りる気配はない。また次の学生を相手にしている。 見ていて、なんだか、おかしくなってしまった。学生たちはとうに音を上げているというのに、アテネ五輪で2連覇を狙う世界チャンピオンの顔には、こらえても、こらえても抑えきれない笑みが浮かんでいるのだ。 無理もないのかもしれない。井上にとっては、あまりに長い4カ月間だった。 今年3月。稽古中に体重150?あ
2013/06/29 リンク