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こんな話を聞いた。 たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめよ... こんな話を聞いた。 たばこ屋の娘で、小さく、愛くるしいのがいた。男は、この娘のために、飲酒をやめようと決心した。娘は、男のその決意を聞き、「うれしい。」と呟(つぶや)いて、うつむいた。うれしそうであった。「僕の意志の強さを信じて呉れるね?」男の声も真剣であった。娘はだまって、こっくり首肯(うなず)いた。信じた様子であった。 男の意志は強くなかった。その翌々日、すでに飲酒を為した。日暮れて、男は蹌踉(そうろう)、たばこ屋の店さきに立った。 「すみません」と小声で言って、ぴょこんと頭をさげた。真実わるい、と思っていた。娘は、笑っていた。 「こんどこそ、飲まないからね」 「なにさ」娘は、無心に笑っていた。 「かんにんして、ね」 「だめよ、お酒飲みの真似なんかして」 男の酔いは一時にさめた。「ありがとう。もう飲まない」 「たんと、たんと、からかいなさい」 「おや、僕は、僕は、ほんとうに飲んでいるの