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坂口安吾 安吾人生案内 その一〔判官巷を往く〕
まえがき 仕事の用で旅にでることが多いので、その期間の新聞を読み損うことが少くない。旅から戻ってき... まえがき 仕事の用で旅にでることが多いので、その期間の新聞を読み損うことが少くない。旅から戻ってきて、たまった古新聞を一々見る気持にもならないので、いろいろの重大ニュースを知らずに過していることがある。 そんな次第で、オール読物の編輯部からきた三ツの手記のうち、二ツの出来事はちょうど私が旅行中で、知らなかったものである。もっとも、一ツはラジオの社会の窓だそうだが、ラジオが探訪する以上は直前に新聞記事でもあったはずだ。 はじめの相談では、月々の今日的な出来事、主として犯罪の犯人の手記にもとづく社会時評というのであったが、こうして手記を読んでみると、どう扱ってよいのか、甚だしく困惑するのである。なるほど、本人の手記であるから、本人といえばカケガエのないものだが、その手記がカケガエがないとは限らない。人間の仕でかすことは、個性的なもので、その人だけの特別な何かがある筈のものゝ、それについて説くの
2010/01/22 リンク