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東浩紀氏の新展開と欠落について
『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年)の著者東浩紀氏の紹介に紙面を割く必要はないだろう。霞が関で氏... 『ゲンロン0 観光客の哲学』(2017年)の著者東浩紀氏の紹介に紙面を割く必要はないだろう。霞が関で氏の名を耳にしたことはあまりないけれども、21世紀の日本語論壇の中心に居つづけた人物である。評者もその著作をおおむね同時代的に読んできた。『動物化するポストモダン』(2001年)で、コジェーヴから借用して現代によみがえらせた「動物化」という言葉は、時代を切り取る言葉である(※)。『一般意思2.0』(2011年)は民主主義の新たな可能性に目をひらかせる好著である。 「観光客の哲学」だって? 『観光客の哲学』という表題は、「観光客」と「哲学」という取り合わせの悪い言葉から、一見してもなにを論じているのかさっぱりわからない。その内容を要約することはむつかしいが、その結論めいた部分を引用しよう。 「ここでぼくたちは、グローバリズムへの抵抗の新たな場所を、...スモールワールドとスケールフリーを同時に