今年6月に発表された「syrup16g、『COPY』から16周年を記念してツアー『十六夜〈IZAYOI〉』敢行」の情報、そして先月アナウンスされたアルバム『delaidback』発売のニュースに、このテキストを読んでいる中でも少なからぬ割合の方が胸ざわつかせたことと思う。おそらくその方々は、あたかも理性のファイアーウォールを難なく突破し感情を攪拌する高性能ウィルスプログラムの如きその楽曲の妖力に一度でも囚われたことのある、あるいは今でも囚われっ放しの人だろう――と確信してやまない。僕もまさに、その「感染者」のひとりだからだ。 見つめてしまったら心が重力崩壊しかねない場面や事象を残酷なまでに美しく描き出す、死刑宣告の無差別連射のような歌詞の数々。気だるい諦念の海の底からなけなしの希望を突き上げるような五十嵐隆(Vo・G)独特の歌声。ギターロックとニューウェーブの狭間から痺れるような白昼夢感を