科学技術がどれだけ進歩して、人類の知の総量がどれだけ増しても、人間同士の争いはなくならないようです。かつての争いの多くは貧しさの中から生じていました。いまは、豊かな者同士も争う世界になっています。いったん争いが大きくなると、それを止める知恵を私たちは持ち合わせていません。これも残念ながら私たちが近年の国際紛争から学んだ教訓です。たとえ人間社会から争いを根絶することはできないとしても、その暴力的なエスカレートを予防する工夫はないものでしょうか。 本書は、「自立」や「競争」を強調する近代化の過程ですっかり弱体化した「中間集団」を育むことが争いの予防に役立つという仮説を提示します。中間集団は、国家の「出先」になることもありますが、逆に、人々の連帯の結節点として権力に抵抗したり、異議申し立てをしたりする母体にもなります。争いがエスカレートしてしまうのは、このような中間集団が機能せず、権力を支える人
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