2008年を迎えた。次に迎えるのは2009年である。2009年には、裁判員制度の開始が予定されている。裁判員制度は、国民の司法参加の名の下に導入されたものであり、いわば民主主義の理念をその基礎に据えていることになっている。だが実際には、裁判員制度が民主主義理念の実現の一環として推進されるのは、論理の筋を違えた話である。 「民主主義」と言った場合に何を意味するのかは、それによって議論の内容の過半が左右される程に重要である。ここでは、しばしば語られているように、「治者と被治者の同一性」こそが価値理念としての民主主義の内実に当たるものであると考えよう*1。これは要すれば、ある政治的決定から影響を被る者はその決定作成に参与することができるべきである、という考え方である。この考え方を政治分野に限らない決定一般に拡張すれば、その論理の型は、いわゆる自己決定原理と重なる。以上から、統治権力の在り方・用い