六月の夕方、なんともいえない風景に出くわしたので書き留めておく。 その日の私は、Xという会合に出席するために、遠い街を歩いていた。不況の折にもかかわらず、街を歩く人達の表情もどこか明るく、梅雨の合間の晴天を、誰もが楽しんでいるかのようにみえた。 駅前のスクランブル交差点で信号待ちをしている時に、その歌声は聞こえてきた。 振り返ると、三十歳前後とおぼしき男性が、バスターミナルの近くの路上でギターの弾き語りを始めたところだった。アニメキャラクターがプリントされた青色のTシャツにジーンズという出で立ちの彼は、身体を左右に小さく揺らしながら、ミスターチルドレンの歌いそうな歌詞を、よくとおる声で歌っている。特別な魅力を感じるほどではないにせよ、夕焼けの午後七時に似つかわしい、どこか人懐かしい感覚を呼び起こすような歌声だった。 そのとき、すぐ近くでマックシェイクを飲んでいた女子高生二人組が、彼のほうを