日本語テキストを印刷する活字書体のひとつに、アンチック体と呼ばれる書体があります。実際にアンチック体が使はれてゐる印刷物を探してみたり、電子活字の広告に記された売り文句を眺めてみたりしたところでは、主な用途は辞書の見出しであるとか、マンガのフキダシのうち平仮名の部分であるとか、幼児向け絵本などといったところになるやうです。 藤井乙男他『帝国大辞典』より: このアンチック体は常にアンチック体と称されてきたわけではないやうです。例へば上記の『帝国大辞典』(1896/明治二十九年、三省堂)や棚橋一郎他『日本新辞林』(1897/明治三十年、三省堂)などの見出しに使はれてゐる、秀英舎製文堂のものと思はれる六号サイズの肉太平仮名書体は、片塩二朗『秀英体研究』(2004/平成十六年、大日本印刷株式会社)が掲げる推定1896/明治二十九年の製文堂『活版見本帖 未完』や1903/明治三十六年の製文堂『活版見