小学生の時に流行っていた「何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」というアレ。「お前言ったじゃないか、なんで約束を破るんだ」。問い詰めても「俺がいつそんな事言った? 何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」。こんな風に言われてしまうともう何も答えられなくなった。 大人になったら答えられる様になるのかと思っていたけれど、大人になった今では、あれから何回地球がまわったのか、そんな事自体がどうでも良くなった。 「どうして生きるの?」と「どうして死ぬの?」この2つは「何時何分何秒何曜日地球が何回まわった時?」と似ている。何も答えられなくなる。 神蔵さんはそんな疑問に正面から向き合っていると思う。気の遠くなる様な実験を繰り返す科学者の様に。 死んでいく人と生きている人を愛したり憎んだり。夫であるスエイさんをひっくり返したら丁度、イエス様になる。愛憎。表と裏を行ったり来たりして写真で切り取って、文
北陸新幹線が開業し、北陸エリア、富山、石川、福井に注目が集まっている。ということで、伝統工芸品の高岡銅器をはじめとした金属工業で有名な富山県高岡市の文苑堂書店福田本店に行ってきた。 富山県は、歴史と伝統を重んじ、教育熱心という土地柄、本屋好き要チェックの書店集中地域でもある。文苑堂書店福田本店の野坂美帆さんによると、高岡市内だとイオンのモール内に出店する喜久屋書店、車ならそれぞれ1時間かからない金沢市内の明文堂書店・金沢ビーンズ店、富山市内の紀伊國屋書店富山店に足を伸ばす方もいるという。地元書店チェーン店が元気で、競合しながらも頑張っているという点では、谷島屋や戸田書店のある静岡と状況は近いかもしれない。 広い店内には、ドーナツショップを併設。 文苑堂書店福田本店は、富山県内を中心に十数店舗を展開する文苑堂グループの中核店舗だ。新幹線の新高岡駅からも在来線高岡駅、西高岡駅からも車で10分ほ
『勘三郎伝説』 (関容子 著) あまりにも早過ぎた勘三郎さんの死から、もう三年が経とうとしています。それでも、その面影と思い出は、色褪せることがありません。 というのも、生前の勘三郎さんと多少でも直接ふれあいのあった人たちに、彼は通り一ぺんではない、強烈な印象を遺していったからでしょう。 たとえば、新派『鶴八鶴次郎』に出演した舞台稽古のときのこと。場末の寄席に鶴次郎が落魄の身を託(かこ)ちながら自棄(やけ)酒をあおる小道具の湯飲みを手に取ると、それが茶渋だらけに薄汚れた代物だった……大感激した中村屋は、すぐさま新派の小道具さんを呼び出して、熱い言葉と眼差しで、心からの感謝を表す。 また、何か新しい顔ぶれの芝居に参加したときのこと。楽日前夜に打上げの会があり、そこでいつも脚光(スポツト)を浴びせてくれている照明さんの顔を初めて見た。三階の天井近く、自分から最も遠い場所で、この人は毎日ずっと自
『お食辞解』 (金田一秀穂 著) 私たちは生き物である。生き物は植物と動物とに分類されるが、私たちはそのうちの動物の範疇(はんちゅう)に含まれている。植物と動物を区別するものは、その栄養の摂り方にあって、植物は無機物と太陽があればよく、たいへん自立的、平和的であるのだが、動物は酸素などだけではなく、他の植物や動物を捕食しなければ生きていけない。 動物であれば、どんな原始的なものであれ、他の生き物を食べて生きている。私たちも、その遠い出発点からこのかた、殺生することを運命づけられてこの世にある。 食欲と並んで、睡眠欲とか性欲とかを生物的にもっているというが、睡眠や性をずっともっていたのかは怪しい。原生動物は眠ることがあると思えない。半分眠り、半分覚醒しながら、彼らの一日の生活はあるのではなかろうか。いつ眠って、いつ起きたのか、彼ら自身にもわからないに違いない。性欲に関しては、明らかに、雌雄両
少女の手がふいに動いた。 〈おじさんは、私たちの味方? それとも敵?〉 これは、主人公荒井尚人が作品最初の事件で容疑者の手話通訳を行った際、容疑者の娘から投げかけられた質問である。尚人と何の関係もない読者でありながら、この問いかけにはドキリとさせられる。そしてそのドキリが、尚人自身と読者を作品の深みへと導く原動力となっている。この作品は全編を通じて哲学的な問題を内包しており、ミステリーでありながら考えるヒント満載の人生論でもあるのだ。 一読してすぐに現れる主題は、聴覚障害の世界を生きる人々の実態であろう。 ただ、それに直接光を当てるというよりは、その世界を「身近に見ている」人物の目を通して現実を語らせている。当事者ではなく、当事者にかぎりなく近い健常者を軸にしているため、啓発的な部分に気を取られることなく、普通のミステリーとして読むなかで自然に実情を受け止めていける。それがこの作品の魅力で
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