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ブックマーク / kara-sen.cocolog-nifty.com (109)

  • 文-体・読本: 痛みの表現

    の場合、痛みを表す言葉としては「ちくちく」「ずきずき」「しくしく」といった擬音によるくり返し言葉がよく使われます。これに対し英語ではpulsing,beating,drilingなど、その刺激の上体や刺激を与える物を具体的に表した言葉が多く使われています。 患者さんの痛みについて尋ねるものを「痛みの質問表」といいますが、その草分けの存在であり、世界的にも最もよく使われているマクギル疼痛質問票というものがあります。マクギル大学の心理学者であるメルザック博士が作ったものです。  この質問票には、痛みを表現する形容詞が全部で78個並んでいます。『標準 痛みの用語集』(南江堂)を作成するときにこれらの形容詞をどのように載せるのかを悩みました。といいますのも、これまでにさまざまな日語に訳されているからです。悩んだあげくに別表としてそれら形容詞を掲載することに決め、国際結婚されている言語学者や医

  • 文-体・読本: 関節会話

    年よりは物知りだ、ということになっています。ある意味間違いではありませんが、行き過ぎるとなんでも「そんなことはわかっている」とばかり言うことになるのです。要するに、人の言うことを聞かないということです。こういうニュースがあったとかいうと、「そんなの昔あった」とか、やたらとしたり顔をする。せっかく箱根で良い景色を見ても、「箱根も俗になったねえ」みたいなことを言うのです。 ある夜、いつものようにゾウムシを解剖して調べていたときには、数十年来の謎が解け、感動したことがあります。四国のゾウムシを調べていくと、剣山の頂上付近のやつだけが形がまったく違う。 「ああ、やっぱり違うよなぁ」と思って、その感動だけで一日もつのです。これこそが思いがけない幸福です。  虫の話を細かくしたら嫌がられそうなので省きますが、四国のゾウムシのおかげで小学校のときから抱いていた「吉野川はなぜ変な形なのか」という謎が解けた

  • 文-体・読本: 合力は伸びる

  • 文-体・読本: エンゼルメイク

    あれは、ちょうどウタコさんがきている午後だった。お祖母さんがおもむろに彼女に言った。 「大きくなったでしょ」 「ん?」ウタコさんが、お祖母さんの口の方に耳を向けた。 「顔の、腫れ」 するとウタコさんは首を傾げながらこう答えた。 「あたしには、あんまりわかんないけどねえ。こないだと変わんない気がするけどねえ。うーん」   するとそこへ、お茶を運んできたお祖父さんが憮然として口を開いた。 「またはじまったか。大きくなったでしょ、てか。鏡見せてよ、か。何度も何度も、この人にはあきれるねえ。毎度言うけど、生憎、我が家には鏡がひとつもなくなってしまったんだよ。みんな割られちゃったの」(中略)  お祖父さんが畳に転がった鈴を拾ってシャンシャンと、いらいらした感じで鳴らしはじめた。 「あのな、ばあさんよ。ばあさんの顔を見るのは、オレとウタコさんと、それと、えーと、タカシ、いや、マサオ、いや、えーと、誰だ

  • 文-体・読本: 哲学病患者

  • 文-体・読本: 身体の自己コントロール

  • 文-体・読本: キリスト教と天皇

  • 文-体・読本: なまはげ考

  • 文-体・読本: 日本と北朝鮮の共通項

  • 文-体・読本: 人間ではない人

    石破 私が大学二年のときにロッキード事件で田中さんが逮捕されたんです。その前に田中疑惑が報道されたとき、生意気盛りの私は「いくらお父さんが尊敬する田中角栄さんでもこれはいけないんじゃないか」と言ったのね。そうしたら、父親がしみじみと「お前は田中に会ったことがあるのか」「ありません」「俺は田中とずーっと一緒に仕事をしてきた。お前は会いもしないで人のことを決めつけるのか。そんなことは絶対に許さん。田中は金なんかもらってない!」と言うわけ。「どうして?」と訊いたら、「田中がもらってないと言ってるからもらってないんだ。いいか、人を信じるというのはそういうことなんだ」と。 阿川 そういうことなんだ・・・・・・。 阿川 角栄さんに実際にお会いになった印象はいかがでしたか。 石破 魔神ですよ。人間ではないよね。とにかく会ってると体が震える。圧倒的存在感で。人間的なオーラというか魔性というか。恐さもあり、

  • 文-体・読本: 容認の段階

  • 文-体・読本: クリスマスの本当の意味

  • 文-体・読本: 美女と般若

  • 文-体・読本: こら、立て

    向井 僕の場合、持って生まれた癖なのか、職業柄なのか、わからないことがある。さっき説明したように、僕の仕事は顕微鏡をのぞくわけですよ。それで、ほんの微妙な違いで、「ガンだ」とか「ガンじゃない」と判断する。一カ所だけ見ていると正確に判断できない ので、一瞬のうちに視野の全体を見なければならない。だから、見た瞬間に隅々まで見て分析する癖がついているのかもしれません。そのせいか、何を見ても、細部にこだわっちゃうんですよ。普通の人があまり気にしないで通り過ぎることでも、「あれは何なんだ」と思ってしまう。 向井 イチローがバッターボックスに立ったときの足の角度が今日はちょっと違う、と見た瞬間に気づくんです。それで、「どうしたんだろう」って一晩中、じっと分析してしまうんですね。 幸田 そういう分析癖の成果か、女性の声を聞いただけで、どういうことを考えているのか、わかってしまうそうですね。 向井 そのこ

    funaki_naoto
    funaki_naoto 2007/12/21
    「見た瞬間に隅々まで見て分析する癖」
  • 文-体・読本: 美醜の意味

    そんなとき、一冊のの表紙に目が釘付けになった。米国の乳がん術後の女性が両腕を広げて海辺に立っている写真で、傷跡に小さな葉を重ねて小枝に見立てた刺青を入れていた。 俵さんは、「天眼鏡で刺青を何遍も何遍もじっと見たの。すごいなぁって、脳天をかち割られるほどの感動をうけたんや」と言う。 「私は何の罪も犯していないし、女として卑下する理由はないはず。それなのに、手術後は男を好きになり恋をする勇気がなくなりました。女であれば、好きな男を見ればいいなと思い、愛されたい、一緒に寝たいと感じるもの。でも、もう男を愛する資格もなくなった。当時の恋人は私のおっぱいを見て去っていきました。手術で命を救ってもらったけど、私は女としての人生を失ったのです」  さらに、こう続ける。 「そのまま何十年も生きていく人の気持ちを考えたことありますか。どちらが残酷だと思いますか。もちろん、乳がんの当の苦しみは再発転移後、

  • 文-体・読本: 薩摩言葉

    薩摩言葉はふつう日語にはない文末が子音で終わる特徴があるという。つまり「面倒なこっ」はT、「肝が煎っ」はRが最後の字。大工が「でっ」としか聞こえないのは末尾がKなのであろう。司馬さんは「薩音」と表現している。 『翔ぶが如く』には多くの薩摩言葉が使われて、雰囲気を出すのに効果的である。乱酔癖を「イモ掘り」、べ物に卑しい人を「ヤシゴロ」、カッコいいことを「武者がよか」、いい意味で大ざっぱにしておくことを「大概大概(テゲテゲ)」などじつにおもしろい。西郷隆盛が県令の大山綱良を「盗犬の如くヒロヒロ」していると評したり、岩山を四つんばいで登るという危機的状況で、「夜這(ヨベ)ごとある」といったユーモアは、土地の言葉の肌ざわりがあってはじめて成り立つ。  印象的なフレーズに「タチンコンメ」がある。すばやく用件を片付けるという意味で、相手の「太刀が来ない前に」からきているという。同意語に「イッコンメ

  • 文-体・読本: 消えた青い鳥

    funaki_naoto
    funaki_naoto 2007/11/17
    「平成のいまの日本語からは青ばかりでなく色彩感がすっかり失われて、砂漠のようだ」
  • 文-体・読本: じゃんけんパラシュート

    九州大助手が福岡県内で言語地理学上の調査をしたところ、全体的には「パイナップル」が多数派だが、宗像市以北では「パラシュート」が優勢という結果が出た。なぜこの地域だけパラシュートなのかは、はっきりしない。 B級重大ニュース『週刊新潮2007.11.8』

  • 文-体・読本: 命がけのコンサート

  • 文-体・読本: 言葉を食べてしまう

    松居 読み手の気持ちが言葉と一緒に伝わってくるんです。ですから、読み手がほんとにその絵が好きで読んでいる時には、もう生き生きとその言葉と絵とが聞き手の子どもの中に入っていくわけですね。ひじょうに深く入っていく。  たいへん面白い例があるんですけれど、二歳、三歳、四歳ぐらいの子どもっていうのは自分の好きなを繰り返し繰り返し読ませます。もう毎日ほんとに繰り返し読ませます。そうしますとね、覚えてしまいます。そしてこんど自分の口でそれを語ります。その語り方に特色があるんです。原文と一言半句違わないように語るんです。これは共通しているんです。私もその体験はありますし、私がよくにも書いておりますが、俵万智さんが三歳の時に『三びきのやぎのがらがらどん』を字が読めないのに全部言えた。それは、その前に、「一年間、毎日何度も母に読んでもらっていた」からです。で、三歳のある日、突然自分の口から出てきた。そ