出版業界の用語に「にゅうこう」というものがあります。このことばを「使用排斥運動を繰り広げてもいいくらいに厄介なことば」と評している出版関係者もいます。なにが厄介なのでしょうか。 まず、「にゅうこう」に一般的に使われる漢字をあてはめると「入稿」となります。「入」は、入ること、あるいは、入れること。「稿」は、「原稿」などのことばがあるように、下書きを意味します。 入稿では、原稿を入れる作業、または、原稿が入る作業が行なわれるわけです。原稿を入れる先といえば、印刷工場になります。つまり、入稿はもともと、原稿用紙に書いた小説や詩などの原稿を、印刷工場に入れる作業を意味するわけです。いっぽう、原稿が入ってきた印刷工場は、その手書き文字の並びをみながら活字を並べていき、印刷物としての体裁をつくっていきます。 しかし、いま出版業界では、手書きの原稿を印刷工場に渡すといったことは、ほとんどされなくなりまし