イラスト・小笠原 徹 「どうすれば面白い文章が書けるんでしょうか?」 時折、そう訊かれることがある。私は正直に「わかりません」と答えていたのだが、それも愛想がないので、「そんな方法があるなら、私も教えてほしいくらいです」と切り返すことにした。実際、そう思っていたのだが、これは間違った答えであることに最近気がついたのである。 方法やコツが「ある」などと思えば、それらを知るまでは面白い文章が書けないことになる。文章より内容などを考え込んでしまうことにもなり、肝心の文章が先に進まないのだ。 才能もそうだろう。文章は才能だと言う人もいるが、自分に才能が「ある」などと思うと、文章を書く際にその才能を見せなくてはならなくなる。モノであれば「ある」のを見せるのはたやすいが、才能はモノではないので、見せるといっても何を見せるのかよくわからず、見せようとしている姿勢を見せることになって、自意識過剰に陥