シンセサイザーの面白いところは、値をいじることでフレーズが変化すること パソコン音楽クラブ インタヴュー パソコン音楽クラブの5作目となるアルバム『Love Flutter』。ダンス・ミュージックに軸足を置き、ノイズや音の揺らぎにも満ちた作品だ。聴こえるのは、大人になってそのかたちは変わったかもしれないけど、なくなることはなく、むしろ通り過ぎることができないような、生活にある心の機微、ときめきについて。 アナログ・シンセサイザーを導入し、身体の動きがそのまま伝達される手演奏も多く取り入れたというこの作品で、パソコン音楽クラブの二人が考えていたのはどんなことだったのか、今作で取り組んだサウンドや活動のあり方についても話を訊いた。 (インタヴュー・文/佐藤遥 写真/Syuya Aoki 協力/岡村詩野) Interview with Pasocom Music Club (Shibata Ao
二項対立を越えた先に、立ち現れる「定義ができないもの」 OGRE YOU ASSHOLE『自然とコンピューター』インタヴュー OGRE YOU ASSHOLEのニューアルバム「自然とコンピューター」がリリースされた。 現在ライヴでも強烈な存在感を放っているアナログシンセサイザーの導入がより進められたサウンド、グルーヴは怪しげにもファニーにも聞こえ、ルビンの壺のようにその表情を固定させない。サイケデリック、クラウトロック、60~70年代以降の電子音楽などをはっきりと通過しながら「今、私は一体何を聞いているんだ?」と思わせる、キャリアを通じたこのオウガ印とも言える感覚。その深化について、今回Zoomにて出戸学(ヴォーカル/ギター)にインタヴューの機会を頂き、話を訊くことができた。 本文には収めていないがインタヴュー終盤、TURN編集部の方から 「“自然”と“コンピューター”って、ネイチャーなも
ラ・モンテ・ヤングやエリアーヌ・ラディーグ(Éliane Radigue)、そしてヨシ・ワダなどの作品をその古典とし、瞑想や宗教的世界観との結びつきなどいわゆるニューエイジと重なる要素を持ちながらも、形式的にハードコアであるが故に常にエクスペリメンタル・ミュージックの一つの極と認識されてきたドローン・ミュージック。 しかし90年代の音響派世代による新たな文脈の付与と発展形の模索、そして12kなどが牽引したゼロ年代後半のいわゆるアンビエント・ドローンの隆盛を経て以降、それはアンビエントと接地する領域として、抹香臭を取り除いた穏やかな音楽としても認知を広げ、2010年代のニューエイジ・リヴァイヴァルによってアンビエントの射程が汎ジャンル的なものとなった現代においても、(汎ジャンル的な波及とはまた異なるかたちで)様々な進化を遂げている。 近年にあってその最も際立った動向といえるのがオルガン・ドロ
EP-4を表面的に説明してみる。 1980年に京都で結成されたポスト・パンク・バンド。ノイズ、インダストリアル、そしてエスニックな要素も取り込んだハイブリッドなファンク・サウンドを特徴とし、その人工的なテクスチャーは現代のエレクトロニック・ミュージックにも通じている。音楽活動をトータルな表現として捉え、状況主義的な手法を使ったライヴ告知や作品形態およびその流通経路までふくめ、非順応的とさえ言える独自な発想をもって展開した。また、ときに侵犯的で、意図的に攪乱した政治的表現も厭わなかった。アートワークをめぐって波紋を呼んだファースト・アルバム『Lingua Franca-1』は、必聴盤に値する。1985年5月21日に『The Crystal Monster』をリリースするも、その後バンドは活動休止状態となるが、2012年5月21日に復活した。 以上。 1980年代は破壊の時代だった。リオタール
2024年5月7日、スティーヴ・アルビニが亡くなった。数日後にはその訃報が日本にも届き、以降多くの方々が哀悼や感謝の意を表している。 おそらく多くのリスナーにとってもそうであろうが、レコーディング・エンジニアとしての彼の存在は特に90年代以降のロックにとっては欠かせないものである。 私自身、彼が関わった作品で真っ先に思い出されるのはスリント『Tweez』(1989年)、Dazzling Killmen『Face of Collapse』(1994年)、ニューロシス(Neurosis)『Times of Grace』(1999年)、ドン・キャバレロ『American Don』(2000年)、Dianogah『Battle Champions』(2000年)、そして彼自身がメンバーであるシェラックの諸作といった辺りで、精神的にはパンク~ハードコアへの熱意を維持しながらも、音楽的にはハードコアの
告白すると、僕は折坂悠太を避けていた。といっても、聴くことを避けていた訳ではない。折坂悠太を知ったのは2017年にライヴ録音の『なつのべ live recording H29.07.02』が出た時で、これは凄い人が現れたものだと思ったし、興味惹かれて、インタヴューを読んだりもしていた。 しかし、言葉を発するのは避けていた。めんどくさかったのかもしれない。何か書こうとしたら、職業柄、気の利いた指摘のひとつもしなければいけない。ところが、折坂悠太という歌手は最初から完成されている感があって、その余地がないような気がした。なにしろ声が強い。その声の強さは民謡歌手や演歌歌手にも通ずるところがある。日本語が腰を据えた響きで入ってくる。 個人的にも親交のある中村公輔や葛西俊彦がエンジニアリングを手掛けているので、サウンド・プロダクションにも興味があった。過去の2枚のフル・アルバム、2018年の『平成』
KISHINO TABATA BROPHY(KTB)とは、岸野一之、田畑満、フィリップ・ブロフィによる新プロジェクト。新……と言っても、それぞれにつきあいの長い3者によって自然発生的に起こったスポンティニアスな邂逅になる。ZENI GEVAのリーダーとして圧倒的な影響力を持ち続けつつも、80年代初頭からマルチ・インストゥルメンタリストとして世界規模で活躍する、KK NULLこと岸野。ボアダムスやのいづんずり時代からギタリストとしての才覚を発揮、自身のバンドであるレニングラード・ブルース・マシーンやアシッド・マザーズ・テンプルなど様々な場で活動してきたギタリストの田畑。そして岸野の友人で良き理解者の一人でもある、オーストラリアのドラマー/マルチアーティストのブロフィ……といった曲者たちによって完成されたファースト・アルバム『デンジャラス・オービット』は、岸野が生成したビートやアイデアを軸に、
連載 The future belongs to analogue loyalists スティーヴ・アルビニに捧げるメモワール Vol.2 翌1992年の2月19日、僕は東京《中野サンプラザ》の前に立っていた。その日はニルヴァーナの来日公演だったのだが、ライヴを観るためではなく、スティーヴ・アルビニ来日公演のチラシを撒くためにである。その時、誰とチラシを配ったのか記憶が定かではないのだが、ライヴは観ずに終演時間の頃合いを見計らって、ゾロゾロと中野サンプラザから出てくるお客さん相手に、チラシを一枚一枚配ったのを憶えている。コンサートを見た知り合いに会うと、「アンコールが“Smells Like Teen Spirit”でしたよ」「え? そうなんや」なんて会話をしたりしていた。 翌3月にスティーヴは初めて日本にやってきた。恐らく前年のスティーヴとZENI GEVAの初邂逅以降に計画されていたの
悪いけど私はデビューした時から川本真琴のファンだ。だからわかる。彼女は決して衝動だけのアーティストなんかじゃないってことが。 それに気づいたのは、もう今から20年くらい前、彼女の正式なライヴとしてはおそらく最初だった渋谷クアトロでのワンマンを観た時だ。ライヴ自体は楽しかった。その優れた言語感覚や生き生きとしたメロディ、パワフルなギター・カッティングなどはもとより、女の子特有の愛らしさや無邪気さに人気の目線が集中する理由もよくわかった。けれど一方で、この人は本当はもっと自分でのびのび気ままにやっていきたいのではないか、とも感じていた。その時のバック・メンバーは非常に達者なミュージシャンたちだったが、演奏は全く破綻のないもので、それゆえなのか、彼女自身はなんだかすごく窮屈そうに見えたのだ。窮屈、というのは、言い換えると退屈と捉えることもできる。つまりはそういうことなのだろう、と。 そして、その
「ジャングル/ドラム&ベースの始まりを辿ると、ふたつのカルチャーが源流にあることがわかる。ひとつは、90年代初頭にアシッド・ハウスに代わりハードコア・ブレイクビーツが主役に踊り出たレイヴ・カルチャー。もうひとつは、ジャマイカ移民が持ち込んだレゲエのサウンド・システム・カルチャー。このふたつがレイヴ・シーンの中で交錯して生まれたハイブリッド・ミュージック、それがジャングルだ」 『ベース・ミュージック ディスクガイド』 ニア・アーカイヴスはジャングルの申し子である。それは彼女がシャイFXやコンゴ・ナッティ、ロニ・サイズといったレジェンドたちと共演したこと、そして彼女自身がデビュー当初から、ジャングルにこだわり続けて楽曲をリリースし続けているだけが理由ではない。ニアがイギリス人とジャマイカ人のハーフであるという血統的事実がそのまま、ジャングルという音楽ジャンルの成り立ちと静かに重なり合っていると
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く