著者である船山徹先生からご恵贈いただきました。目下、取り組んでおられるテーマ、――様々な仏典はインドから中国へどのようにして伝播し、そして、言語的・文化的背景を異にする土壌において、どのような形で受容されたのか――が詳論されています。もしくは、仏典が漢訳される現場を種々の文献から復元し、その問題点をあぶりだす試みと言ってもよいでしょう。 これがいかに重要な研究であるか、それはサンスクリット原典が失われた漢訳仏典に触れたことがある人であれば、即座に理解されるはずです。 かくいう私も、デュッセルドルフで「称名」をテーマにしたシンポジウムが行われた際、世親の『浄土論』(無量寿経優婆提舎願生偈、サンスクリット原典なし、大正蔵1524、菩提流支訳)の一部を、菩提流支の他の翻訳テキスト(チベット語訳もあるもの)との比較から考察しました(その際にも、船山先生の論文に助けられました)。つまり、翻訳者の翻訳
2/17(土)にあがたの森文化会館講堂ホールで開催した「キリシタン語学の最先端 大航海時代のキリシタン文献を通じてみるヨーロッパ言語と日本語の邂逅」講演会は盛会のうちに終了しました。 あがたの森文化会館は、旧制松本高校、信州大学文理学部、同人文学部の校舎として利用されていた歴史のある建物を利用しています。 窓の外には雪が降っていましたが、こういう場所で興味のあるキリシタン語学の話題を堪能できたのはとても幸せでした。 「とても寒い」と聞いていましたが、午前中から暖房を入れたせいか問題なかったですね。 豊島正之先生による講演では、当時の文法が果たした社会的役割、ラテン語は本当にlingua franca(介在言語=母語を異にする人々の間で意思疎通が可能な言語)だったのか、ラテン文法に基づく日本語文法の構築、ラテン語に基づく言語普遍への志向など、とても興味深く奥深い内容のお話がありました。 岸本
日時 2018年2月17日(土) 13:00~17:00 会場 あがたの森文化会館 講堂 信州大学人文学部国際化推進事業 予約不要 入場無料 講師 豊島正之氏(上智大学文学部教授)「宣教時代の文法学に見る普遍性-ラテン語で書く日本語文法」 岸本恵実氏(大阪大学大学院文学研究科准教授)「宣教と多言語辞書」 山田昇平氏(京都精華大学講師)「ドミニコ会の視点で写した日本語」 講演会ちらし(A4size).pdf 大航海時代、世界各地で布教活動を行ったカトリック修道会は、ここ日本でも精力的に活動しました。 日本人にキリスト教を布教し、宗教書を翻訳することを迫られた宣教師たちは、ラテン語の文法書や辞書を拠り所としつつ、母語であるポルトガル語やスペイン語も織り交ぜた多言語環境のもとで高い水準の日本語能力を獲得していました。 宣教という実践的な目標のもと外国語を研究し学習する「宣教と言語学」というテーマ
昨年の12月14日に世界同時公開となった映画Hobbit: An Unexpected Journey 邦題『ホビット:思いがけない冒険』の準備の間に、翻訳監修者として参加しました。 すでにご存じのとおり、この映画はピーター・ジャクソン監督による映画The Lord of the Rings 邦題『ロード・オブ・ザ・リング』三部作の原作物語となっている『指輪物語』の前編となっている『ホビットの冒険』の映画化です。 僕自身、映画『ロード・オブ・ザ・リング』の日本語版上映の際に、字幕翻訳および吹き替え版の「エルフ語監修者」としてお手伝いをさせて戴きました。 もしかしたら、その流れで再びお手伝いをすることになったと勘違いをされている方もいらっしゃるかと思いますが、そうではありません。 今回の『ホビット』については、配給がWarner Brothers Ent.となりましたし、『ロード・オブ
2006年にウィーン大学に提出した博士論文の出版準備が大詰めです。せっせと索引作成などをやってますが、最近、思わぬ見落としがあったことに気づきました。 ブッダが私たちを正しく導いてくれる指導者であることをどのようにして確認したらよいのか、という疑問をめぐって、プラジュニャーカラグプタは「私たちが知覚や推理を駆使して確認できる対象をその人が述べているのであれば、その人のことを信頼して実践に踏み出しなさい」というようなことを答えます。 まぁ、ここまでは彼のお師匠さんであるダルマキールティも言っていることですが、問題はその次です。 「仮にブッダが教えた諸行無常などを自分たちの認識で確認できたとしても、そのことをブッダが直観していたかどうかなんて確定できないではないか」(PVA 51.33意訳) ブッダの教えは彼自身の覚りに基づかない可能性もあるじゃなないか、という反論です。つまり、自分では理解し
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