ヘンリー・ダーガー 非現実を生きる (コロナ・ブックス)(小出由紀子編著) ヘンリー・ダーガーが暮らした部屋や絵に圧倒されるばかりで15000ページ以上のタイプ原稿として残された『非現実の王国として知られる地における、ヴィヴィアン・ガールズの物語、子供奴隷の反乱に起因するグランデコーアンジェリニアン戦争の嵐の物語』(=『王国』)には近づくことができない。子供時代/ヘンリー・ダーガーの部屋の考古学/『王国』を構成する三つの要素/非現実の王国へようこそ/『王国』は戦争中!/イメージの救出、あるいは拉致?/アーロンバーグ・ミステリー/現実性と非現実性/アルカディア、とコンパクトに分解したキーワードで、誰かに読ませたい読んでもらいたいと書かれたものではないことを知りながらの傲慢な、でもせずにおれないアクセスに耳打ちしてくれるのが本書。坂口恭平さんが寄せた「ヘンリー・ダーガーという技術」のことと学習
『昭和の子ども生活絵図鑑』、ながた はるみ 絵/奥成 達 文 金の星社。 1926年から1989年が昭和。太平洋戦争をはさんだこの年月をひとくくりにして「昭和」とはいえないと、著者のお二人が少年少女時代を過ごした昭和21年から40年ころの思い出を中心に、人、物、風景をできるだけ多く集めて描き下ろしたとあとがきにある。 わたし自身の子ども時代の暮らしには重ならないが見覚えのある物や似た遊びがいくつも出てくるし、ながめていると両親やおじおばに聞いてきたことや映画で繰り返し観たことが自分の中に「懐かしさ」となって溜まっていることに気づいて可笑しくなる。懐かしい〜って雰囲気でいうけどじっさいなにも知らないでしょ>自分。でも懐かしいと思うのだ。親戚が集まったときに語られる話が完成度があがってがっちりインプットされるというのとも違う。外で庭木が枯れている。 入学式、授業参観、道草、お祭り、縁側、茶の間
神戸の詩人・小野原教子さんが9月いっぱいで閉店した海文堂書店のために詩を書いたと聞いた。お店と店長に手渡しするために挿画と装訂を戸田勝久さんにお願いしてその言葉を本に仕立てたという。思い→言葉→(届けるための)冊子。そうしてできたものを何て呼べばいいのだろう。 小野原さんが私信でくれた話だけれどどうしてもしゃべりたい。これは特装本でも限定本でもない。そのまんまなんだ。 (撮影:戸田勝久) 『海よ』神戸元町「海文堂書店」のための小さな唄 詩 小野原教子 装訂/水彩カット 戸田勝久 それぞれに海文堂書店の栞を一枚添付する 綴じ糸には絹で作られた三味線三の糸を使用 2013年9月30日刊行 印刷・製本・発行/黄昏書局 戸田勝久さんの個展会場で『海よ』の展示もあり。 ・「叙友舎」「書坊の夢」戸田勝久展 10/12(土)~20(日) ・啓祐堂ギャラリー戸田勝久展 12/14(土)〜22(日)
浮世絵木版画彫摺師三代目 梶川芳雄 わたしのところは代々浮世絵の摺師で、この土地で仕事を続けて来ました。わたしは三代目にあたり、大正11年1月15日に現在の元浅草、当時の永住町に生まれて、現在68歳になります。初代は伯父の山本歌五郎、二代目は父親の梶川留吉です。(略) 日本の初期版画というのは墨線だけのものなんです。墨の線だけで色のつかない版画ですね。なぜ墨線だけかというと、僕の考えでは、こういう木版の技術というものは中国から伝わって来たものなんですね。それは仏教の経典からなんです。お経を版にするという技術は相当古くから伝わっているんですよね。そこでその技術を絵に利用したことが、日本に浮世絵が出来たきっかけだと思うんです。字が彫れるんだから墨線の絵だって彫れるわけなんですね。これが浮世絵の元祖だと思うんです。初期の版画としては菱川師宣の大きい墨線の版画があるんです。最初はそれに筆でちょちょ
阿部川町の刷師 北島秀松 明治38年生まれだからかぞえで74歳になんの。ところは阿部川町よ。いまじゃ元浅草……。昔は浮世絵関係がごまんといたとこだね。(略)おやじの後輩で関岡仙太郎って人に弟子入りしたの。あたしがいた時分には小島町にいてね。小島町から転々と越したけどね。(略)うちのおやじは北島権次郎ってね。仏画ばかりやってたし、兄貴は名人はだで、酒で早く死んじゃったが、そんなわけで自分もがんばらなくちゃていうんで、うちからの出じゃ一人前になれないんで、手間とってほうぼう京都、大阪と歩いたね。天皇陛下がご大典の時は関西へ行ってお掛字刷ってね。あたしは陛下の顔だけ刷って、向こうの職人が体刷ってね。(略) 田原町に弟子をつかってやりだしたのは昭和8、9年の頃だね。(略)終戦後、あたしあたしが鏑木清方の「築地明石町」を刷ったの。下谷神社にいま模擬の機械刷りのがかかってるけど、博物館に板があったのを
ウミネコ鳴く鳴く。夜も。まだ姿は見ていない。 以下、2011年6月の朝日のニュース記事より。 ウミネコ、東京のど真ん中で子育て 上野のビルに巣30 北海道や東北の離島などで子育てをするカモメの仲間のウミネコが今年6月、東京・上野のビルの屋上で繁殖していた。東京大学の樋口広芳教授(生態学)が初めて確認した。繁殖力が強い鳥だけに都市の生態系に影響を与えないか、調査を続けていくという。海鳥のウミネコは春、北海道や東北地方の海岸の岸壁や沖の小島で子育てをする。都内で姿を見かけるのは越冬期だけだった。しかし、4〜5年ほど前から、春から夏にかけても、都内で姿が見られるようになった。ただ、これまで繁殖は確認されていなかった。樋口教授は今年6月末、上野の不忍池に近いビルの屋上で約200羽が集まり、20〜30のペアが営巣しているのを見つけた。複数の幼鳥もいた。ウミネコは近年、減農薬の水田が増えたことなどから
「ユリイカ」2012.10 特集*ジョン・ケージ 鳴り続ける〈音〉 生誕100年/没後20年 p175) 「異なる流れ」の詩学 ジョン・ケージと墾久理途詩【コンクリートポエトリー】 金澤一志 …… ちょうどそのころである。「コンクリート」から線が引かれるビル、ファールシュトレームという定義上の系譜。「ポエトリー」を支えるアルス、マラルメ、スタイン,パウンドらの文学的系譜。いずれにも重みがなくなって教義が後方に去ったころ、のろのろとケージがメソスティックを書きはじめる。ケージ自身が認めているようにこの書法は、とくに書き始めのころのメソスティックは、テクストの意味とかたちをグラフィックに整理しなおすという点でコンクリートに類似している。しかし国際的なピークを過ぎ、著名なアンソロジーも出揃っているのでケージとコンクリートの関係が疑われることはほとんどなかった。グループや国家を単位にして扱われるこ
…… 平田:そう、渋谷さんの音ってシングル・トーンがとてもきれいに響きます。……この前一緒に作っていただいた『ルース・ド・ソル』の話をしませんか? 渋谷:ずっと平田さんとふたりのアルバムを出したいと思っていて、……ただその編集を僕がなかなか進められなくて、そのうちあなたがシビレを切らせちゃった(笑)。 …… 渋谷:平田さんはね、オリジナルがとってもいいんです。変に歌謡曲っぽくなくて、僕に言わせるとちゃんとしている。やっていて自由度があるし、気持ちが良い。 …… 平田:渋谷さん、よく「僕は自分で曲は書かなくていいんだ」とおっしゃいますよね。そのへんの理由をもうちょっと聞かせてください。 渋谷:誰の曲であっても音楽って神様の思し召しでできている。だから誰のオリジナルとか言うのは無意味だと思うわけ。だから僕がやる曲もみんなが作ってくれる、神様からの贈り物だと。そう考えれば別に作っても作らなくても
世田谷美術館に「小堀四郎と鷗外の娘 ひと筋の道」展。四郎が2,30年代に渡欧先や世田谷で描いた人物がすばらしい。四郎が装丁した妻・杏奴の本『追憶から追憶へ』『不遇の人鴎外』も並ぶ。梅が丘の自宅の玄関ホールだろうか、二人が並んで写る写真もいい。四郎の作品は世田谷美術館に、杏奴の原稿や書簡などは世田谷文学館が所蔵、文学館では「父からの贈りもの―森鷗外と娘たち展」開催中。 写真は「ベルリン森鴎外記念館の歴史」より。1984年10月、左端が杏奴、ひとりおいて四郎。 美術館で開催中の山崎曜「手で作る本の教室」展は19日(日)まで。今回は物理的に大きいものが目立つ。大小に関わらず手間は一緒であるけれどでかいのはそれだけ失敗の機会も増えるからやっぱりたいへん。ただ、大きい本を作ろうというのではなくて必要があってこの大きさになったというのが山崎曜組の思考回路の特徴のひとつ。曜先生はモデルを与えず、個々の着
藤井敬子さんの版画製本工房「アトリエ・リーヴス」のルリユール展「かざる本」が京都のギャラリー i (東山区祇園町南側584)で10月27日から11月1日(日)まで。〈版画を綴じた本、和紙で作った本、海外のコンクール出品作など、15名のルリユール作品がそれぞれのしつらえで並〉ぶそうです。お近くのかたは藤井さんをつかまえて質問攻めにしてしまいましょう。NHK趣味悠々の藤井さんの講座はどんどん再放送して欲しいなぁ。うちにある『お気に入りをとじる』はすっかりぼろくなりました。しかしこのNHK出版のウェブは色が悪趣味だし犬もカートも古くさいしなにより見にくくて???お近くに本屋さんがありましたら少し時間はかかりますがお手元に届くまでの送料は無料ですのでどうぞお取り寄せを。本屋さんは日本全国で12000件くらいになってしまったそうです。 写真は東京製本倶楽部ウェブサイトの同展案内ページより。
東洋美術学校C棟C-1教室(地下教室) で10月25日(日)13:30から「糊を炊く。日本画修復vs東京製本倶楽部-生麩糊って、なに?・・その実演と討論-」。同校保存修復専攻講師の島田達生さんが製本家でランビエンテ修復芸術学院紙作品修復科講師でもある岡本幸治さんと吉備国際大学文化財学部教授の鈴木英治さんとともに実演かつ討論とのこと。主催は東京製本倶楽部、入場無料。 糊って誰もがあまりに馴染みなのに奥が細かに深すぎ。なんでもそっか。でも糊を”炊く”って雰囲気がつかめないなど気が遠くなりつつ、広さを感じるのは気持ちいい。今日おりしも短い未来にむけたノリ製本を試してきたところ。あらわれる物には対極を感じるがナニナニ糊的には揺るぎなき系統樹下にありまして。以下、同校ウェブサイトより。 修復作業で欠かせない『生麩糊』について、3名の先生方に実演とお話をしていただきます。表装や日本画修復の作業では伝統
活動10年を迎えた東京製本倶楽部の記念展「紙の技、本の技」がゴールデンウィークに開催されます。 さまざまなルリユール作品のほか、和紙によるルリユールや未綴じ本、コレクションの展示もあり。 ■会期:2009年4月29日(水)-5月6日(水) ■会場:目黒区美術館 区民ギャラリー 会員による「目黒製本工房」の実演がうれしい。全部、みたいな。 4月30日 近藤理恵さんの「折本」/中村美奈子さんの「箔押し」 5月1日 内田由紀子さんの 「交差式製本」/坂井えりさんの 「和紙のしわ染め」 5月2日 藤井敬子さんの 「リンクステッチで綴じる」/岡本幸治さんの 「中世製本サンプル」 5月3日 未々月音子さんの 「和綴じ」/岡本幸治 さんの「交差式製本」 5月4日 大家利夫さんの 「はなぎれ」12:00-14:00 5月5日 田村正さんの 「紙すき」11:00-13:00、14:00-16:00
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