歌舞伎の舞台で演奏される唄は、その場面をより効果的に印象づけるために欠かせないことは、多くの方がご存じでしょう。しかし、現代ではその歌詞を聴き取り、理解できる方は少ないのが現状です。素晴らしい歌舞伎の舞台を盛り上げる芝居唄の歌詞が理解できれば、芝居がさらに深く楽しめると思いませんか? 本書はその実現を目指したものです。 「芝居唄」の歌詞の多くは、黒簾の演者たちにより「唄本」「附帳」と呼ばれる覚え書きの帳面として伝承されてきました。本書は初めて本格的な収集テキストとしてまとめられ、歌舞伎の音楽の側面の研究に欠かせない貴重な文献資料として刊行されます。しかし、歌舞伎は観て楽しむものであるのが原則です。そのため、本書には歌詞だけでなく、どの場面で唄われたかや、曲のジャンルなどの情報も丁寧に記載されます。例えば、明日観に行く舞台で流れる「芝居唄」を探すのに便利な三種の索引や、歌詞の意味を深く理解す