著者: 井上章一 「玄関で靴を脱いでから室内に入る」。日本人にとってごく自然なこの行為が、欧米をはじめ海外ではそれほど一般的なことではない。建築史家であり『京都ぎらい』などのベストセラーで知られる井上章一さんが、このなにげない「われわれのこだわり」に潜む日本文化の隠された一面を、自らの体験と様々な事例をもとに考察する。 陋屋で下駄をはく いわゆる南蛮時代に来日した宣教師は、日本家屋でくらしていた。教会や修道院、そして神学校などをたてるさいにも、日本建築をもうけている。本格的な西洋建築を建設したいと、かりにのぞんでも、当時の日本ではできなかった。ミサをはじめとする宗教儀礼も、たいてい畳の上でとりおこなっている。 前にそうのべた。しかし、彼らが屋内で外履きをぬいでいたかどうかについては、まだふれていない。畳や床板の上で靴をはいていた可能性もあるが、そこについては言葉をにごしている。 こう書けば
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