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ブックマーク / kangaeruhito.jp (149)

  • 第5回 日本の風俗とむきあって | 土足の限界 日本人はなぜ靴を脱ぐのか | 井上章一 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    著者: 井上章一 「玄関でを脱いでから室内に入る」。日人にとってごく自然なこの行為が、欧米をはじめ海外ではそれほど一般的なことではない。建築史家であり『京都ぎらい』などのベストセラーで知られる井上章一さんが、このなにげない「われわれのこだわり」に潜む日文化の隠された一面を、自らの体験と様々な事例をもとに考察する。 陋屋で下駄をはく いわゆる南蛮時代に来日した宣教師は、日家屋でくらしていた。教会や修道院、そして神学校などをたてるさいにも、日建築をもうけている。格的な西洋建築を建設したいと、かりにのぞんでも、当時の日ではできなかった。ミサをはじめとする宗教儀礼も、たいてい畳の上でとりおこなっている。 前にそうのべた。しかし、彼らが屋内で外履きをぬいでいたかどうかについては、まだふれていない。畳や床板の上でをはいていた可能性もあるが、そこについては言葉をにごしている。 こう書けば

    第5回 日本の風俗とむきあって | 土足の限界 日本人はなぜ靴を脱ぐのか | 井上章一 | 連載 | 考える人 | 新潮社
  • 第4回 南蛮時代のミサ聖祭 | 土足の限界 日本人はなぜ靴を脱ぐのか | 井上章一 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    著者: 井上章一 「玄関でを脱いでから室内に入る」。日人にとってごく自然なこの行為が、欧米をはじめ海外ではそれほど一般的なことではない。建築史家であり『京都ぎらい』などのベストセラーで知られる井上章一さんが、このなにげない「われわれのこだわり」に潜む日文化の隠された一面を、自らの体験と様々な事例をもとに考察する。 畳とカトリック 天橋立は、京都府の宮津市にひろがる名勝である。そして、同市には、ヨハネの天主堂がある。こちらはカトリックの教会である。建物は1896(明治29)年にたてられた。フランスのルイ・ルラーブ神父が開設したという。 今も、ここでは、毎週日曜日にミサがおこなわれる。現役の教会である。そして、そういう施設としては、おそらく日でいちばん古い。 木造だが、構えはゴシックやロマネスクの教会を手としている。正面には薔薇窓らしいしつらいがある。縦長の窓には、ステンドグラスがは

    第4回 南蛮時代のミサ聖祭 | 土足の限界 日本人はなぜ靴を脱ぐのか | 井上章一 | 連載 | 考える人 | 新潮社
  • 第28回 「淡さ」論――「味巧者」への道 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社

    著者: マキタスポーツ 書を捨てよ、メシをおう――。有名店をべ歩くのでもなく、かといって大衆酒場ばかりを飲み歩くのでもなく、たとえ他人に「悪」と言われようとも、あくまで自分の舌に正直に。大事なのは私が「うまい」と思うかどうか。情報や流行に背を向けて、己の「道」を追究する――これ即ち、土俗のグルメである。自称「にスケベ」な芸人が、「美味しい能書き」を存分に垂れるメシ論。 「淡さ」というセンス・オブ・ワンダー 「日人っぽさ」について、「」の観点から考えてみたい。かなり抽象的な話になると思うが、決してナショナリスティックに「日最高!」と叫んだり、保守的な思想を賛美したりするような内容ではないことは保証する。また、醤油や味醂、出汁、旨味などから考える「お料理の土台」のような手合いのものでもない。もっと精神的、あるいは肉体的にも思わずグッときてしまう価値的基盤、いわば「マトリックス(

    第28回 「淡さ」論――「味巧者」への道 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社
  • 後編 政治家が高学歴化しないのは日本の知的伝統? | 河野有理×森本あんり「日本の『反知性主義』を問い直す」 | 河野有理 , 森本あんり | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 河野有理 , 森あんり 尾原宏之さんの「考える人」連載をまとめた『「反・東大」の思想史』が、新潮選書から刊行されました。刊行を記念して、東京大学の出身で、尾原さんと同じく日思想史を専門とする河野有理・法政大学教授と、『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書、2015年)の著者、森あんり・東京女子大学学長が、書をめぐって対談しました。 (「前編 東大の学費は値上げすべきなのか?」はこちらから) 日の知的伝統は「反・科挙」? 森 アメリカの反知性主義には、「神の前ではみな平等である」というキリスト教的な軸があります。だから、ハーバード大学やプリンストン大学の出身者と対峙しても、一歩も引かない強さがある。もし「反・東大」が日版の反知性主義だとするなら、何がその思想的な軸となるのでしょうか? 河野 その軸をひと言で説明するのは難しいのですが、私のような日思想

    後編 政治家が高学歴化しないのは日本の知的伝統? | 河野有理×森本あんり「日本の『反知性主義』を問い直す」 | 河野有理 , 森本あんり | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 前編 東大の学費は値上げすべきなのか? | 河野有理×森本あんり「日本の『反知性主義』を問い直す」 | 河野有理 , 森本あんり | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 河野有理 , 森あんり 尾原宏之さんの「考える人」連載をまとめた『「反・東大」の思想史』が、新潮選書から刊行されました。刊行を記念して、東京大学の出身で、尾原さんと同じく日思想史を専門とする河野有理・法政大学教授と、『反知性主義:アメリカが生んだ「熱病」の正体』(新潮選書、2015年)の著者、森あんり・東京女子大学学長が、書をめぐって対談しました。 日における「反知性主義」? 河野 尾原宏之さんの『「反・東大」の思想史』(以下、『反・東大』と表記)を読んで、このをめぐって対談をするなら、ぜひ『反知性主義』の著者である森あんりさんにお願いしたいと思いました。というのも、まさにこれは日版の『反知性主義』として読めますし、またそのように読むべきだと思ったからです。 森 ありがとうございます。アメリカにおける反知性主義(anti-intellectualism)とは、名門

    前編 東大の学費は値上げすべきなのか? | 河野有理×森本あんり「日本の『反知性主義』を問い直す」 | 河野有理 , 森本あんり | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 序文 もう建築はいらない? | 堀部安嗣「建築の対岸から」 | 堀部安嗣 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    著者: 堀部安嗣 数々の住宅や公共施設を手がけてきた建築家・堀部安嗣さんが、「つくることありき」の建築の世界を抜け出て、文学、医療、経済、政治……など、建築外のジャンルの人々に、「いま、なぜ建てるのか?」という根源的な問いをぶつけます。より有機的な、持続可能な建築や住まいのあり方を探るヒントがここに――! 私は二つの環境に興味をもち建築を設計してきました。一つは〈建築を包み込む〉環境で、これを〈大きな環境〉と呼ぶことにします。そしてもう一つは〈建築に包まれる〉環境で、これを〈小さな環境〉と呼ぶことにしましょう。気候風土といった自然環境に、経済、法律、流通、治安、価値観といった人為的な環境が複雑に絡み合って大きな環境を形成し、建築をすっぽり包み込んできます。この環境は決して私一人の力で制御することはできません。しかしこの大きな環境の実体と現実を正確に知ることで、より良い小さな環境をつくり出す

    序文 もう建築はいらない? | 堀部安嗣「建築の対岸から」 | 堀部安嗣 | 連載 | 考える人 | 新潮社
  • 「わけのわからないもの」の鎮魂 | 「帰って来た橋本治展」記念講演&対談 | 松家仁之 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 松家仁之 1977年、小説「桃尻娘」でデビューした橋治さんは、以降、小説や古典の新訳、社会時評、評論、イラストレーション、ニットなど多種多様な作品を残し、多くの人を楽しませてきましたが、2019年1月29日、惜しまれつつ70歳でこの世を去りました。 その膨大な「仕事」を軸に生涯をたどる展覧会「帰って来た橋治展」が神奈川近代文学館にて開催中です(2024年3月30日~6月2日)。開催を記念して行われた同展編集委員の作家・松家仁之さんによる講演、さらに橋さんの実妹である柴岡美恵子さんを迎えた対談を採録。家族しか知らない貴重な橋さんの姿から、編集者として橋さんに教わったこと、展覧会の見どころまでをふたりが語ります。 こんにちは、松家と申します。よろしくお願いします。 今日は橋治さんの実の妹である柴岡美恵子さんもいらっしゃっています。美恵子さんといろいろお話をするようになったの

    「わけのわからないもの」の鎮魂 | 「帰って来た橋本治展」記念講演&対談 | 松家仁之 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 後篇 「ギャツビーて誰?」から始まった | 岸本佐知子×津村記久子「世界文学に関するあれこれをゆる~く語ります」 | 津村記久子 , 岸本佐知子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 津村記久子 , 岸佐知子 『華麗なるギャツビー』『ゴドーを待ちながら』『ボヴァリー夫人』……名前は聞いたことあるけど、実は読んだことのない名作と真っ向から向き合った津村記久子さん。時にはツッコミを入れながら、古今東西92作の物語のうまみと面白みを引き出した世界文学案内『やりなおし世界文学』の刊行を記念して、翻訳家・岸佐知子さんと対談。後篇では作品論から作家論まで話が広がりました。二人が選んだ「Zoomイベントに一緒に出たくない作家」は誰? (前回の記事へ) 当日の対談はZoomで行われた ギャツビーとYRP野比 岸 そもそも、この『やりなおし世界文学』の企画はどうやってはじまったんですか? 津村 毎日新聞社の「の時間」から連載しませんか?とお話をいただいて、最初は自分が行ったことのない街のことを想像して書く、という企画で、わたしはエストニアには行ったことがないけど、調べたり

    後篇 「ギャツビーて誰?」から始まった | 岸本佐知子×津村記久子「世界文学に関するあれこれをゆる~く語ります」 | 津村記久子 , 岸本佐知子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 前篇 『ボヴァリー夫人』は「吉本新喜劇」!? | 岸本佐知子×津村記久子「世界文学に関するあれこれをゆる~く語ります」 | 津村記久子 , 岸本佐知子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 津村記久子 , 岸佐知子 『華麗なるギャツビー』『ゴドーを待ちながら』『ボヴァリー夫人』……名前は聞いたことあるけど、実は読んだことのない名作ありませんか? そんな作品たちと真っ向から向き合ったのが作家・津村記久子さん。時にはツッコミを入れながら、古今東西92作の物語のうまみと面白みを引き出した世界文学案内『やりなおし世界文学』の刊行を記念して、翻訳家・岸佐知子さんとの対談が実現。読み巧者の二人ならではの翻訳文学の楽しみ方を軽妙に語り合いました。 津村記久子『やりなおし世界文学』(新潮社公式HPはこちらから) 名前は知っているけれど、読んだことのない 津村 名前は知っているけれど、中身のよくわからないを読んでみるというのが『やりなおし世界文学』の始まりで、「の時間」という雑誌でスタートし、その後に「波」、Webマガジン「考える人」で連載していたものが今回一冊にまとまりまし

    前篇 『ボヴァリー夫人』は「吉本新喜劇」!? | 岸本佐知子×津村記久子「世界文学に関するあれこれをゆる~く語ります」 | 津村記久子 , 岸本佐知子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 第6回 「納豆チャーハン」の最適解 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社

    手強いぞ、納豆は 「納豆チャーハン」について明確な「答え」を知ってる人を私は知らない。あるいは「知っている」と言い張る向きもあろうが、私は「あー、思考をやめたのだな」と訝しく思う。 今回は「納豆チャーハン」という、各論から展開する。この連載では、私の独特な癖を総論として書いてきたが、そんな理屈より、もっと瑣末なポイントから全体を見渡すような取り組みが出来ないかと考えてみたのである。 そもそも「納豆」は手強い。その昔は西日ではあまりべられる習慣がなく、「好き」「嫌い」の面のみで語られることが多い品だった。それが今や全国ほぼ満遍なくいただける健康品として、国民の胃袋のベースを担うポジションについている。だが、そのポジションを確保してから、まだ日が浅い。来はもうとっくに“ナショナルフード”であって、皆もなんとなくそう認知しているはずなのだが、なんと言おうか、“あまり考えてもらっていな

    第6回 「納豆チャーハン」の最適解 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社
  • 第15回 土俗のラーメン論(1)――余は如何にしてラーメンを語ってきたか | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社

    「みんな! ラーメンについてちょっと真剣になりすぎ!」 と、注意したい気分なのである。何故、そんな優等生の学級委員みたいなことを私のような人間が言わなくてはいけないのか。今回はそのようにしてラーメンを考える回にしたい。 ブームの最終地点 ネットの無秩序状態を指して、「先生のいない学級会」と言ったのは、ジャズ・ミュージシャンの菊地成孔氏だったか。ラーメンにも同じことが言えると思う。しかし無秩序だからこそ、様々な主観や情熱が衝突し合って“熱”が生まれているのであって、そのことをあながち否定出来ない。 縄文時代、いや地球誕生のその時から、様々な事象は栄枯盛衰を繰り返してきた。そのものが持つ未知の可能性が花開き、隆盛を極め、それが極点まで行った時、全ては終わり、そして始まる。諸行は無常なのだ。 私の好きな音楽、例えばロックンロールもそうだった。エルビスがいて、チャック・ベリーがいて、ビートルズがい

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  • 第14回 「ご飯のお供」改め「米バディ」 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社

    「ご飯のお供」とは何か? まず定義をしておきたい。何を以って「ご飯のお供」とするかだ。 例えば「バター」はどうだ? バターだけだとダレるのでそこに醤油を垂らす場合もあるが、ならば「醤油」も“お供”であるのか? 「いや、あれは調味料だろう」。そういう声もありそうだ。そうなると、調味料と「ご飯のお供」を分ける必要も出てくる。曖昧だったことが、定義することによって輪郭がはっきりすることは新鮮だったりしまいか。実は「ご飯のお供」は、未だはっきりとした定義付けがされていないのかもしれない。 あるいは…… 「飯にお供など必要ない!」 と、怒鳴りつけてくるようなゴリゴリの「メシ保守」もいるだろう。「何かに頼って自立出来ないメシはメシではない、今すぐメシ憲法を改正すべきだ!」と強弁されても困る。ここは穏便に、「日のご飯は世界一」とか何とか言いくるめて、議論を進めていこうと思う。 「調味ギア」のフル活用

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  • 後編 ウクライナ戦争における「音楽的事件」 | 戦争と音楽 | 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 音楽学者の第一人者・岡田暁生さんと、博覧強記の音楽評論家の片山杜秀さんの対談『ごまかさないクラシック音楽』(新潮選書)の刊行を記念して、朝日新聞の吉田純子さんを司会役に、著者の二人が「戦争音楽」について語り合いました。ロシアによるウクライナ侵攻の最中、音楽はいかなる役割を果たしうるのか――。 ※この記事は、2023年7月1日に朝日カルチャーセンター新宿教室で行われた講座「戦争音楽」(出演:岡田暁生・京都大学教授、片山杜秀・慶應義塾大学教授、司会:吉田純子・朝日新聞編集委員)の一部をテキスト化し、加筆修正を施したものです。 (前編はこちらから) リュビモフの「命がけの音楽」 左から岡田暁生さん、片山杜秀さん 岡田 さて、今ロシアウクライナ音楽シーンで何が起きているのか、ネット上で拡散された2つの動画を参考にしながら考えてみたいと思います

    後編 ウクライナ戦争における「音楽的事件」 | 戦争と音楽 | 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 前編 音楽家は「時代の予兆」を表現するピエロである | 戦争と音楽 | 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 音楽学者の第一人者・岡田暁生さんと、博覧強記の音楽評論家の片山杜秀さんの対談『ごまかさないクラシック音楽』(新潮選書)の刊行を記念して、朝日新聞の吉田純子さんを司会役に、著者の二人が「戦争音楽」について語り合いました。ロシアによるウクライナ侵攻の最中、音楽はいかなる役割を果たしうるのか――。 ※この記事は、2023年7月1日に朝日カルチャーセンター新宿教室で行われた講座「戦争音楽」(出演:岡田暁生・京都大学教授、片山杜秀・慶應義塾大学教授、司会:吉田純子・朝日新聞編集委員)の一部をテキスト化し、加筆修正を施したものです。 左から吉田純子さん、岡田暁生さん、片山杜秀さん 反復する歴史 吉田 今日はこんなに大勢の方に集まっていただいて、当にありがとうございます。 岡田暁生さんと片山杜秀さんのお二人は、言うまでもなくクラシック音楽の専門家です

    前編 音楽家は「時代の予兆」を表現するピエロである | 戦争と音楽 | 岡田暁生 , 片山杜秀 , 吉田純子 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 7.近代国家は「氏名」からはじまった | #タナカヒロカズを探して | 田中宏和 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    江戸時代のネーミングに二大派閥があった これまでわたしたちの同姓同名運動の歴史を振り返ってきた。自分が「田中宏和」という名前で生きてきた原点を探ると、明治時代のはじまりに行き当たる。このタイミングで現在の「氏名」フォーマットで人名を示す制度が導入されたからである。そう、今に続く現在の戸籍だ。 まず現代の日人の「氏名」の二つの構成要素と規則を確認しておこう。「氏」は姓、苗字(名字)などとも言われる家の名、ファミリーネームである。もう一つの「名」は個人名、ファーストネームであり、この「上の名前」と「下の名前」を組み合わせてフルネームとなる。「氏名」のことを「姓名」と言うこともある。戸籍に登録された「氏名」が「名」として原則一生ついてまわる。これが現代の日人にとっては常識である。 しかし江戸時代は、幼名、成人名(元服名)、当主名、隠居名の4種類の改名を人生の節目で行うのが当たり前だった。む

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  • 第9回 北島三郎の移籍 | 北島三郎論 艶歌を生きた男 | 輪島裕介 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    「北島くん、きみがクラウンへ行ってくれないかね」 ようやく我らがサブちゃん自身の日クラウンへの移籍について記すときがきた。 奥山弘による馬淵玄三の伝記『「艶歌の竜」と歌謡群像』(1995)によれば、星野哲郎は、斎藤昇と馬淵がともに移籍することで、コロムビアの引き止め工作にもかかわらず自身も移籍を決断したという。そして「決意を固めた星野は斎藤と一緒に北島三郎の獲得に動いた」。静岡県沼津市の公演に二人が現れる。奥山が伝える北島の回顧は次のとおり。 一回目のショーを終えると、二人が会場の外で待っているというので、出ていくと、いつもと違う固い表情をしていた。斎藤さんは「何となく地方公演も見ないとな」といい、哲ツァマは「俺、斎藤さんと行くよ」といったきり。ただ、二人とも、黙って俺の方をみている。話もしない。あぁ、目で「一緒に来い」といっているんだな、とわかった。(pp.153-154) 北島三郎の

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  • 第11回 食はいつも未知なもの――アボカドと袋麺 | 土俗のグルメ | マキタスポーツ | 連載 | 考える人 | 新潮社

    はじめてのアボカド はじめてアボカドをべた時のことを、今でも思い出す。 1980年代の前半だったと思う。たしか、テレビでは千代の富士が活躍、ホテルニュージャパンが燃えていた、そんな頃。 私の生家のまん前に八百屋があった。そこのご主人は戦前、家族で南米のペルーに移民していた人だった。そして戦後、日に戻ってきて山梨の片田舎で八百屋を始める。 青年期、苦しい移民生活の中で、彼の地でべていた“森のバター”なる謎の果物をいち早く日に定着させようと、ご主人は、まださほど日では流通していなかったソレを店頭に並べ、行き交う奥方たちに啓蒙、販売していたらしい。 「塩コショウを振って、パンと一緒にべるといいよ」 私の母は「Sさんの言う事だったら間違いない。だってあそこの息子は東大に行っているから」と、よくわからない理屈を振りかざして、私と兄にそれをべさせようとした。 「新しい物を口に入れる」と

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  • 後篇 オノマトペから言語が発達した? | 言葉は「間違い」の中から生まれる | 今井むつみ , 高野秀行 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 今井むつみ , 高野秀行 「言語はジェスチャーゲーム(言葉当て遊び)のようなものだ」という画期的な見方を提示して話題になっている『言語はこうして生まれる』(モーテン・H・クリスチャンセン、ニック・チェイター著)。書について、辺境ノンフィクション作家の高野秀行氏と、慶應義塾大学SFC教授の今井むつみ氏が語り合った。後半はオノマトペとアブダクション推論から言語習得を考えます。 (前篇はこちらから) 高野 今井先生も最近『言語の質』(秋田喜美氏との共著)というを出されましたよね。 今井むつみ・秋田喜美『言語の質 ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書) 今井 はい。このでは、どうやって言語の多様性が生まれ得るんだろうかということを真剣に考えてます。『言語はこうして生まれる』が出るとは知らずに書いたものなんですが、根っこが同じだから、言いたいことはすごく似ていると思いました。

    後篇 オノマトペから言語が発達した? | 言葉は「間違い」の中から生まれる | 今井むつみ , 高野秀行 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 前篇 AIは「ジェスチャーゲーム」を知らない | 言葉は「間違い」の中から生まれる | 今井むつみ , 高野秀行 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社

    著者: 今井むつみ , 高野秀行 「言語はジェスチャーゲーム(言葉当て遊び)のようなものだ」という画期的な見方を提示して話題になっている『言語はこうして生まれる』(モーテン・H・クリスチャンセン、ニック・チェイター著)。 書にいち早く反応したのが辺境ノンフィクション作家の高野秀行氏だ。世界の辺境を訪れて25以上の言語を実践的に習得してきた経験を『語学の天才まで1億光年』として昨年上梓した高野氏は、自らの言語観が書と非常に近かったことに驚いたという。 そんな高野氏の言語習得にかねてから注目していたのが慶應義塾大学SFC教授の今井むつみ氏。書の原著者とはお互いの研究に刺激を受けてきた仲で、共通するテーマに取り組んだ『言語の質』を最近出版した(秋田喜美との共著、中公新書)。 この度、高野氏と今井氏の対談が実現。3冊のを題材に、言語について縦横に語り合った。 高野 今井先生は、著者のモー

    前篇 AIは「ジェスチャーゲーム」を知らない | 言葉は「間違い」の中から生まれる | 今井むつみ , 高野秀行 | 対談・インタビュー | 考える人 | 新潮社
  • 第8回 「日本クラウン」の誕生 | 北島三郎論 艶歌を生きた男 | 輪島裕介 | 連載 | 考える人 | 新潮社

    クラウン設立のキーパーソン さて、長沼と対立して辞職し、クラウンを設立することになる伊藤正憲は、1926年に日コロムビアの前身、日蓄音機商会に入社している。三重県で製茶と製糸を営む名家の出身で、普通部(中学)から東京の慶応義塾に通っている。予科2年時に補欠入隊、除隊後すぐに、紡績関係の材料を扱う企業を起こすが失敗し、手元に残っていた材料がレコードにも使えるとのことで、慶応時代の友人が勤務していた日蓄に売り込みに行ったことがきっかけで入社している。 彼の回想録『レコードと共に四十五年:私のアルバム』(1971)には、「当時レコード商売というものが比較的新しい企業だったこともあって、将来性を考え、結局入社することになってしまった」(p.58)といい、入社以前の音楽的嗜好については全く記述がない。入社後はセールスマンとして働き、京城(ソウル)でのコロムビア製品不買運動を鎮圧し同地の支店長を経

    第8回 「日本クラウン」の誕生 | 北島三郎論 艶歌を生きた男 | 輪島裕介 | 連載 | 考える人 | 新潮社