複雑で、使いづらく、うしろめたい…… 日本の社会保障はなぜこんなに使いづらいのか。複雑に分立した制度の歴史から、この国の根底に渦巻く「働かざる者食うべからず」の精神を問い、誰もが等しく保障される社会のしくみを考える、山下慎一さんの新刊『社会保障のどこが問題か―「勤労の義務」という呪縛』より、「はじめに」を公開します。 †複雑で使いにくい社会保障 なぜ日本の社会保障は、これほどまでに複雑でわかりにくく、使いにくいのか。読者各位も、一度はこのような思いを抱いたことがあるだろう。 社会保障とは、医療や老後の年金、介護、子育てなどに関わる公的な給付であり、日本国憲法25条(生存権)にその法的な根拠をもつ。人々が日々の生活に不安を持つことなく、健康で文化的に生きていくための生活保障を目的とするものと言える。 ただし、日本の現実はその理想のようになっているだろうか。そうではない、ということを示すために