先日,積層チップ間の無線通信技術を開発している慶応義塾大学 教授の黒田忠広氏にお話をうかがう機会がありました。黒田氏の研究グループは,オンチップ・コイル間の磁界結合を利用した無線通信技術で多くの研究成果を発表しています(関連記事)。6月に開かれた「2010 Symposium on VLSI Circuits」では,2入力NANDゲート(ファンアウト4)の動作エネルギーとほぼ等しい10fJ/ビットという超低エネルギーで無線通信できる技術を発表し,注目を集めました。無線で1ビットを伝送する際のエネルギーが,論理ゲート一つ分の駆動エネルギーと同じというのは驚くべきことです。 コイル間の磁界結合を利用した無線通信技術は,低消費電力化だけではなく,低コスト化にも向くと黒田氏は指摘しています。例えば,DRAMチップの積層に利用した場合,競合するTSV(Si貫通ビア)技術に比べて「チップ当たりのコスト