気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 1989年1月の終わり、あと2週間後に卒業論文を提出しなければならない4年生のY君が私の席に来てこう説明した。 「先生、どうも計算機シミュレーションの条件設定を間違えていたみたいです。スミマセン」 Y君と相棒のF君は「波と船の非線形干渉問題」という難しい研究に取り組んでいた。しかも、私の管理する長さ90メートル、幅3.5メートルの水槽で膨大な実験を行う一方で、スーパーコンピューターを使った計算機シミュレーションも行っていたのだ。実験と計算機シミュレーションの両面から、船の作る波の非線形性を明確にするという大きなテーマだった。 実験との一致が悪いので、計算機シミュレーションの再チェックを指示した結果、返ってきた答えがそれだった。 「そうか、すぐ