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偽物語(上)(西尾維新) このシリーズ、タイトルに「物語」と付いていてもストーリーはどうでもいい。何故なら「化物」が「語」る、「化物」について「語」るのが『化バケモノ物ガタリ語』であり、「偽物」が「語」る、「偽物」について「語」るのが本書、『偽ニセモノ物ガタリ語』である。 語ることすなわち雑談こそが本質であり、実際、ご丁寧にカナはそのように切り分けられている親切ぶりだ。大事件という大事件も起こらない田舎町で、結局そんなに大した事件が起こらないまま進行して、平凡な高校生の阿良々木暦が女の子達と面白おかしく軽快なテンポで雑談しつづけるだけの小説。このシリーズはそのように評する以外無いだろう。 ただの語呂合わせにも思えるやたらマイナーな怪異だの、程ほどにストレートで適度にひねっている筋書きなんて、全然どうでもいいものだ。その意味では、「女子高生がチョココロネの話を延々としてるだけ」なアニメと同じ
桜庭一樹読書日記(桜庭一樹) サクラバカズキがどれだけ編集から愛されているかがすごくわかる本。 もちろん僕も大好きだ。たぶん多くのファンも、この変な女が大好きなはず。作品以上に本人が愛されている作家だと思う。売れてなかった時代にも、あとがきの面白さには定評があった。そのサクラバが書いた読書日記、面白くないはずがない。 サクラバは外見に似合わず、空手道場に通って、けっこう強い。筆名からして男っぽいが、動揺すると一人称が「俺」に戻る。しょっちゅう実家に帰って、一年の半分を新宿歌舞伎町で、もう半分を鳥取で過ごしているようであり、日記のほとんどは編集にいじられたり、両親の言葉に翻弄されたり、変な友人と遊びに出かけた話で構成されている。 あっ、もちろん本の話がかなりの比重を占めている。ちゃんと読書日記している。彼女の本好きは文章の隅々から伝わってくるし、だからこそ編集から愛されてもいるのだと思う。本
さよならピアノソナタ(杉井光) タイトルのとおり、音楽を介して触れ合うボーイ・ミーツ・ガール物。ファンタジー要素も特になく、ハードカバーで売り出しても通用する内容。 ボクはやってないんだけど、音楽をやっていた人ならたぶん2倍は楽しめるんじゃないかな。 少年が少女と出会ったのは、《心からの願いの百貨店》と名付けた粗大ゴミの投棄場所。いつものようにオーディオ機器の部品を漁りにきていたナオは、「世界が滅んだ十五分後みたいな不思議な静けさ」に包まれたその場所で、ピアノの音を耳にする。 彼以外に誰もいないはずのジャンクヤード。1人の少女がゴミの山に埋もれていたグランドピアノで演奏していた。初めてのはずなのに、彼女の顔にはなぜか見憶えがあった。 帰宅してやっと思い出す。 十二歳で国際ピアノコンクールで優勝し、二年半の後に突如活動をやめた天才ピアニスト、蛯沢真冬。まさか、彼女が数日後、自分の学校に転校し
『きみとぼくの壊れた世界』の4年ぶりの続編が登場。続編といっても、1人を除いて同じ登場人物は出てこないので、こちらから読んでも差し支えない。 ノベルズ版とハードカバー版の2種類の装丁があるが、どちらを買うかはお好みにあわせて。しかし価格差が1000円以上するとあっては、答えは明らかだろう。講談社がどういう意図で2種類の装丁で同時刊行したかは知らないが、いかにハードカバーが割高な代物か再認識させられたのは確か。 このシリーズの特徴は独特の読後感の悪さにある。後味がきわめつけに悪いのだ。前作は早すぎたヤンデレ小説だったし、あるいは美少女ゲームのバッドエンドを小説化したもの、と解釈することもできる。その場、その場で、より良い選択肢を選ぼうとして、必死に頭をめぐらせる主人公が行き着いたエンディングは「行き詰まり」。それがどれだけ最悪のエンドだったことか。 そして今回は別の趣向。 題材は将棋。その意
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん 善意の指針は悪意(入間人間) 世間はいつのまにやらヤンデレブーム。 『ヤンデレ大全』なんて本まで出版されるご時世である。しかし以前も書いたが、ライトノベルにおいてはヤンデレは意外と少ないのである(少なくとも知名度は低い)。 例えば、はてなダイアリー「ヤンデレとは」を参照しても、ライトノベルの実例は1つも挙げられていないし、Wikipediaでも同様である。おもにPC系美少女ゲームやそのアニメ版で活躍することが多い。 そこに燦然と輝く1人の少女が降臨した、誰あろう、まーちゃんである。この『嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん』シリーズは、問答無用のヤンデレ小説であり、従来のライトノベルのヤンデレ水準をはるかにぶっちぎっている。 まーちゃんは、『School Days』の言葉や『SHUFFLE!』の楓といった有名なヤンデレとは、かなり異なっている。その系譜をたどる
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない(桜庭一樹) 「本の紹介」カテゴリーがついに100エントリー目!! 50回目と同じく、今回も桜庭一樹を取り上げます。 桜庭一樹といえば、第137回直木賞の候補になったことで、話題になってましたね。ていうか選考会は明日ですか。今回は下馬評としては、ベテラン北村薫が受賞すると言われてますが、候補にあがっただけでもビックリです。 芥川、直木賞候補決まる 『赤朽葉家の伝説』は確かに傑作ですが、この大躍進ぶりは『GOSICK』の1巻を書いてた頃からは、誰も想像つかないんじゃないかな。率直にいって、桜庭一樹って、そんなに売れてなかったし、人気も高くない作家だったはず。 経歴は意外と長いし、その分多作ではあるんだけど、逆に言うとどれもパッとしない状態が長く続いていました。クスブリと言うと失礼ですが、ホントに売れてなかったんだよな。 Wikipedia「桜庭一樹」 1993年、
エロゲー系ブログ界隈で、アージュについての議論が盛んなようです。うちの読者はこの辺の話を追いかけてなさそうなので、まずは簡単なまとめを。 発端は2chの「泣けるとされているエロゲランキング」。このランキングについてのkaien氏の感想から、徐々に広がっていったみたいです。 ■きみはエロゲで泣けるか? (Something Orange) 『君が望む永遠』はアージュのヒット作。ぼくはこれ、あまり好きじゃないんだよなあ。ようするにただのベタなソープオペラですからね。 序章が終わって本編が始まる場面を、いきなりセックスの描写から始めるいやらしさ、気持ち悪さは高く評価しますが、「泣ける」という評判はよくわからない。どこらへんで泣くものなんだろ。■泣けるか泣けないかは問題じゃない (敷居の先住民) ソープオペラってのがどういうものを指しているのかわからないけど、別に泣いてもおかしくないと思いますよ。
これから超傑作の話をしよう。 人は物語と出会う。 人はその人生の必要なタイミングで、ふさわしい時にふさわしい本に出会う。自分の心境に、悩みに、幸福に、不幸に、悲しみに、喜びに、怒りに妙にぴったりはまる物語に出会う。本を読んでいる人間は、誰しもがそれを信じている。そういう体験をしてきたからこそ、いまだに本を読んでいる。 目はすっかり肥えてしまい、傑作に遭遇するより凡作を掴むことが多くなったとしても、本を読み続けるのはそのためだ。本という形に限らない。年間何本も映画を観続けている人もそうだろう。物語を読み続けている人は、小さな確信を持っている。 人はどうして物語を生み出したのか。 その深遠な問いの答えかもしれない。 だけど、今は超傑作の話をしよう。人によっては変人奇人がバカ騒ぎするくだらないお話にすぎないかもしれない。けど、物語はきっとふさわしい読者に届く。人はふさわしい物語に絶対に出会える。
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