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ブックマーク / traindusoir.hatenablog.jp (14)

  • 貨幣面からみる日米経済 - 備忘録

    2月16日のエントリーでは、経済の実物面(実質GDP)の今後の予測から、雇用情勢が今後どのように推移していくかを予測した。今回は、2月14日に公表された2010年第4四半期のGDP速報をもとに、日経済を貨幣的側面からみるとともに、米国のデータと比較する。 まず、GDPデフレーターの前年同期比を需要項目別の寄与度でみると、国内需要の寄与は引き続きマイナスであるが、その幅は緩やかに縮小している。ただし、純輸出の寄与も引き続き大きなマイナスであり、これらをあわせたGDPデフレーターの前年同期比は、大きなマイナスが継続している。 つぎに国内需要デフレーターを貨幣数量方程式に基づき、(1)市中の貨幣量(ベースマネーと信用創造による貨幣供給の増加が物価を上昇させる効果)、(2)貨幣流通速度(貨幣の回転率が上昇することで物価が高まる効果)、(3)財・サービスの数量(商品数量の増加が物価を低下させる効果

    貨幣面からみる日米経済 - 備忘録
  • ビークルとしての中央銀行 - 備忘録

    ※脚注を追加しました。 柄谷行人『世界史の構造』への感想の中で、以下のように記述した。 金位制の時代とは異なり、現代の世界貨幣である主要通貨は不換紙幣である。それは、その素材そのものに価値はないが、国家の負債としての裏付けを持つものである。中央銀行は、この見方からするとビークル(導管)のようなものとなろう。ただし、それは金利と貨幣量の調整を通じて、経済そのものに影響を及ぼし得るような意志を持つ「ビークル」である。不換紙幣が「金や銀」と置き換わることで、世界経済は貴金属の量によって制約されることはなくなり、一方、一国の経済は国家(中央銀行)の政策によってグリップされることになる。 これは、「貨幣が成立する根拠は、それをまた誰かほかの人が貨幣として引き受けてくれることが期待できるという事実」(岩井克人)であって、貨幣そのものは価値の根拠をもたないという見方を否定するために用いたたとえである。

    ビークルとしての中央銀行 - 備忘録
  • 思考実験:デフレ下の所得維持は重要である(Pending) - ラスカルの備忘録

    ※注記を追加しました。(11/26/09、12/02/09)また、不必要な留保を削除する等文章を修正しました。(11/27/09) デフレ下において、いち早く所得維持の重要性を指摘したのがロナルド・ドーアである。 もう1つの「合成の誤謬」は賃金カットである。市場不振、業績悪化への対応として、そして実質賃金の上昇への反応として、賃金コストを削減しようとすることは、各企業の立場からいうと合理的だが、経済全体の観点からみれば、デフレ・スパイラルを加速するだけである。経団連がメンバー企業に呼びかけて、今年の春闘で一斉に3%の賃上げをしようと提案したらどうだろう。それを実行できたとしたら、国内市場で競争している競争相手が全部同じコスト・アップを経験して、その分消費者物価を上げるはずだ。私が、一年半前にそれを雑誌で提案したのだが、実現の可能性を深く信じての論文ではもちろんなかった(「私の『所得政策復活

    思考実験:デフレ下の所得維持は重要である(Pending) - ラスカルの備忘録
  • 日本経済の実物的側面は改善する一方、デフレの定着は明確に - 備忘録

    ※貨幣数量方程式に基づいた寄与度分析のグラフを差し替え、文章を修正しました。(09/12/04) 日、7〜9月期の四半期別GDP速報が公表されました。実質GDPは1.2%(年率4.8%)の増加となり、予想を上回る高い伸びとなりました。特に、前四半期までマイナスが続いていた設備投資の伸びがプラスになったことが注目されます。また、このことは、このところ改善が続いていた雇用面の指標とも平仄が合うもので、2009年の半ば以降、経済の実物的側面は比較的堅調であったことを裏付けています。 むろん、リスク要因として、政権交代によって経済危機対策の一部に執行停止の動きがあることから、このままの堅調さが続くとは限らないという見方も可能ですが、昨年末にみられたような劇的な経済収縮と雇用調整が今年も起きるという見方は、いささか悲観的すぎるのではないかと思われます。 むしろ懸念されるべきなのは、経済の貨幣的側面

    日本経済の実物的側面は改善する一方、デフレの定着は明確に - 備忘録
  • 流動性をめぐって──竹森&クルーグマンの議論から - 備忘録

    ※注記を追加しました。(09/28/09) (前回のエントリー) 竹森俊平「資主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす」 先日のエントリーでは、竹森俊平「資主義は嫌いですか」の第1部の内容を整理するとともに、今後の世界経済と我が国経済の行く末について考えた。 資主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす 作者: 竹森俊平出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2008/09メディア: 単行購入: 14人 クリック: 153回この商品を含むブログ (79件) を見る その後、その帰結部分を読み返しているうちに、まるで貨幣経済はバブルとともに終焉を迎えることを予言するかのような記述があるのを見つけた。これは、その後のリーマン・ショックを予言しているようでもあるが、むしろ、リーマン・ショック後の経済の行く末についても、そう簡単に見通せるようなものではないことを予感させる

    流動性をめぐって──竹森&クルーグマンの議論から - 備忘録
  • 竹森俊平「資本主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす」 - 備忘録

    主義は嫌いですか―それでもマネーは世界を動かす 作者: 竹森俊平出版社/メーカー: 日経済新聞出版社発売日: 2008/09メディア: 単行購入: 14人 クリック: 153回この商品を含むブログ (79件) を見る ※若干修正しました。また、平家さんのコメントを受け、追記を追加しました。(09/18/09) ※注記を追加しました。(09/28/09) 書が出たのは2008年の秋、リーマン・ショック以後の急激な経済の変動が生じる直前であり、サブプライム・ローン問題がベアスターンズ救済によって人口に膾炙し、米国の金融機関が抱える損失についての不透明感がさらに高まりつつあった時期である。書では、リスクと不確実性、バブルと流動性といったキーワードを媒介としながら、著者が注目する経済学者のこの金融危機に対する解釈が流れるように論じられており、読後、第一に感じたのは、もっと早く読んでおく

    竹森俊平「資本主義は嫌いですか それでもマネーは世界を動かす」 - 備忘録
  • ジョセフ・スティグリッツ「スティグリッツ教授の経済教室 グローバル経済のトピックスを読み解く」 - 備忘録

    スティグリッツ教授の経済教室―グローバル経済のトピックスを読み解く 作者: ジョセフ・E・スティグリッツ,藪下史郎,藤井清美出版社/メーカー: ダイヤモンド社発売日: 2007/10/19メディア: 単行購入: 9人 クリック: 97回この商品を含むブログ (36件) を見る 書は、プロジェクト・シンジケートへの2003年から2007年までの連載と、日経済に関する書き下ろしの論文(第1章)からなる。 http://www.project-syndicate.org/series/11/description スティグリッツは、近年、アラン・グリーンスパン前FRB議長に対し辛らつな批判を行っているが、書の以下のような記述(2005年11月初出)を読むと、この考え方は、それ以前からの継続的なものであることがわかる。 しかし、グリーンスパンの残す遺産の真の問題点は、過去五年間にアメリカ

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  • ジョセフ・スティグリッツ「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」 - 備忘録

    世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す 作者: ジョセフ・E.スティグリッツ,Joseph E. Stiglitz,楡井浩一出版社/メーカー: 徳間書店発売日: 2006/11メディア: 単行購入: 5人 クリック: 73回この商品を含むブログ (54件) を見る 格差問題に関する日国内での注目度は、ここ数年で非常に高まった。「失われた10数年」以前は、日社会は世界にもまれにみる総中流社会であり、完全失業率も先進主要国の中で比べて低かった。円高不況期には、マクロ経済全体の成長や日の製造業の「国際競争力」が注目された。バブル期に入ると、金融や不動産の分野において高い収益を上げる会社が注目された。所得格差をみても、この時期には、完全失業率が低下する中で所得格差も広がるというこれまでにない特徴がみられる。そして、デフレと長期不況下にあった1990年代後半以降は、経済成長が鈍化し完全失

    ジョセフ・スティグリッツ「世界に格差をバラ撒いたグローバリズムを正す」 - 備忘録
    guerrillaichigo
    guerrillaichigo 2009/06/13
    自由貿易で比較優位を失う先進国の産業を先進国政府が保護すると、先進国の納税者と途上国が不利になる。途上国のセイフティーネットの欠如が失業のリスクや貧困の増大をもたらる。
  • 日本の雇用システムの柔軟性とその弊害 - 備忘録

    ※追記を追加しました。(09/06/10) 先日のエントリーに関連して─というか、「チンピラ」(爆)のことは無視して─日の雇用システムについて、もっとまじめに考えてみることにしましょう。先日も紹介した大内伸哉「雇用はなぜ壊れたのか」から、別の一節を以下に引用します。 しかし、こうした給料の引き下げは、法的にはそれほど簡単なことではない。すでにある給料システムを変更するためには、原則として、個々の社員の同意が必要であるし(労働契約法8条)、就業規則という労働条件を統一的に定めている規則を変更することにより給料を一括して引き下げる場合には、厳格な要件(合理性)を充たさなければならないからである(同法第10条)。 このように給料による調整が困難である以上、解雇まで厳格に規制するのは経済合理性に合わないともいえる。しかし、現在の法的ルールでは、経営上の必要性がある場合の解雇(整理解雇)であっても

    guerrillaichigo
    guerrillaichigo 2009/06/09
    企業間の雇用柔軟性が低く企業内の雇用柔軟性が高いということは、新規採用時に大企業に入社した者は高い労働条件をほぼ安定的に享受する一方、中小企業に入社した者はその後の努力が報われる余地が小さくなる。
  • 米国の貨幣流通速度は引き続き低下 - 備忘録

    (前回のエントリー) 経済指標からみた米国経済と「流動性の罠」 米国の貨幣乗数の低下について 昨日、米国における2009年第1四半期のSNA統計が公表されました。実質経済成長率は、▲1.6%(年率▲6.1%)と3期連続のマイナスとなりましたが、民間最終消費は3期ぶりの増加となりました。今期の経済成長率の低下は、民間国内投資の大幅なマイナスによるものです。輸入も引き続き減少しており、米国の経済成長に占める純輸出の寄与は、2007年頃から継続して大きなものとなっています。 今後は、公的需要の拡大が期待されるので、消費の持ち直しがはっきりしてくれば、景気は、2009年内にも持ち直すことが考えられるでしょう。 しかしながら、純輸出の拡大は、貯蓄率の上昇と裏返しの関係にあります。貯蓄が拡大する中で投資機会が縮小することは、日型の経済の長期停滞局面にさらに近づくことを意味します。今回の結果では、GD

    米国の貨幣流通速度は引き続き低下 - 備忘録
  • 米国の貨幣乗数の低下 - 備忘録

    先日のエントリーでは、多くの人に注目していただきありがとうございました。先日の文章では、足許における貨幣流通速度の低下がやや強調されていますが、より注目すべきなのは、米国では、経済成長に見合う以上の貨幣量の拡大が継続的にみられていることの方でしょう。*1この点は、日のデフレ時とは違っており、日では、経済成長に見合うだけの貨幣量の拡大はみられませんでした。そして、その理由として指摘されているのが、中央銀行がマネタリーベースを拡大しても、信用創造が十分に行われていないために市中の貨幣量(マネーストック)は増加しないこと、つまり、貨幣乗数(=信用乗数)の低下です。 日における貨幣乗数の低下については、以下の2つの論文がそれぞれ異なった視点から見解を述べていますので、ご参照ください。 小林慶一郎「金融システム不安定化による信用乗数の変化」(ESRI Discussion Paper Seri

    米国の貨幣乗数の低下 - 備忘録
  • 経済指標からみた米国経済と「流動性の罠」 - 備忘録

    の雇用情勢についてひととおりの見通しを行ったので、つぎに、米国の経済情勢についてみておくことにします。昨年11月に掲載した下のエントリーを更新しますが、今回は少し長いスパンをとっています。 http://d.hatena.ne.jp/kuma_asset/20081127/1227792848 インフレ率と完全失業率 まずは、インフレ率と完全失業率です。 ここで注目されるのは、完全失業率の足許における急上昇です。一方、インフレ率は、1990年代以降の低下傾向が続いており、足許では、景況の悪化によってさらに低下することが懸念されています。インフレ率が低水準にある中で完全失業率は急騰しており、こうした状況においては、総需要喚起的な政策をさらに進める必要があるといえそうです。*1 金利と為替 つぎに、金利と為替レートについてみておきます。 長期金利は、これまで、金利水準が国際的に収斂するなか

    経済指標からみた米国経済と「流動性の罠」 - 備忘録
  • ポール・クルーグマン「格差はつくられた 保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略」 - 備忘録

    格差はつくられた―保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略 作者: ポールクルーグマン,Paul Krugman,三上義一出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2008/06/01メディア: 単行購入: 7人 クリック: 176回この商品を含むブログ (65件) を見る 1980年代以降、急速に拡大する米国の所得格差について、書では、技術革新は、格差拡大の要因であるとする直接的証拠に乏しいとし、その主たる要因は、政治的、あるいは制度的なものであったと指摘します。これは、米国の格差が「人為的に」つくられたものであるということを、より強調する視点であるといえるでしょう。 ルーズヴェルト大統領の時代をはさみ、それ以前からの政治的ムーブメントを歴史的に捉えるなかで、ニューディール政策によってもたらされた「大圧縮の時代」と、それ以後の米国の中産階級にとっての恵まれた時代は、その時代の米国に

    ポール・クルーグマン「格差はつくられた 保守派がアメリカを支配し続けるための呆れた戦略」 - 備忘録
  • 中尾武彦「アメリカの経済政策 強さは持続できるのか」 - 備忘録

    アメリカの経済政策―強さは持続できるのか (中公新書) 作者: 中尾武彦出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2008/02メディア: 新書購入: 1人 クリック: 7回この商品を含むブログ (12件) を見る バランスがとれた内容 米国の経済政策について、政策実施の当事者との接点を持つ著者による幅広くタイムリーな紹介。内容は、基的な経済原理を踏まえており、著者の個人的見解を極力抑制した中立的記述によるもので、比較的バランスがとれている。(他方、官僚的に抑制の効いた記述には「面白みがない」との評価もあるかも知れない。)生産性に関する議論、マクロ政策の潮流、対外関係等個別の内容についても、米国の政策担当者が何を考えているのかの情報を得るという意味で、個人的には興味深かった。 ただし、終章の日に当てはめた議論については、自分の見解は異なる。例えば、マクロ経済政策について、「日とアメリ

    中尾武彦「アメリカの経済政策 強さは持続できるのか」 - 備忘録
    guerrillaichigo
    guerrillaichigo 2008/04/05
    サービス業の過剰な対応がこの業種の生産性の低さの(雇用流動化論)も、日本的な雇用システムの下にあっては、必ずしも生産性の上昇に結びつかないのではないか。
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