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ブックマーク / honz.jp (8)

  • 『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる - HONZ

    戦後日における画期的な発明といえば? 人によって答えはさまざまだろうが、個人的には「51C」を挙げたい。 「51C」とは、1951年度に計画された公営住宅標準設計C型の通称である。焼け野原からの復興の過程で、不足していた住宅供給をどうするかが国の喫緊の課題だった。そんな中、35平米というコンパクトな空間で、べる場所と寝る場所を分ける「寝分離」を実現させた「51C」の理念は、その後設立された日住宅公団にも引き継がれ、公共住宅の原型となっていく。間取りを考える際に私たちが当たり前のように思い浮かべる「nLDK」は、ここから発展したものだ。「51C」は、現代日人の住まい方のルーツでもある。 かつては狭い部屋で家族全員が寝をともにするのが普通だったから、「51C」の理念に基づいて設計された公共住宅は、当時の人々には輝いて見えたに違いない。事実、1960年には完成してまもないひばりヶ丘団

    『団地と移民』団地をみればこの国の未来がわかる - HONZ
  • 場所愛、ありますか?『オフ・ザ・マップ』 - HONZ

    自称「独立国家」、飛び地、消滅した国々、廃墟、立ち入り禁止区域……。世界の珍スポットを集めたには、なんとも言えない面白さがある。マイナーな場所にまつわるマイナーな知識の数々に、知的好奇心がジワジワと刺激されるのだ。適当に開いた箇所からつまみいできるのも良いところ。 書『オフ・ザ・マップ』もそうしたの1つである。「失われた」「地図にない」「誰もいない」「手出しできない」といった様々な事情をもつ38の場所が、それぞれ7ページ前後の量で取り上げられていく。 手つかずの土地があったならば、それを手に入れようとする国が現れるのは時間の問題だと思うだろう。しかし、広い世界を見渡せば意外と例外が見つかる。 スーダンとエジプトの間にある、ビル・タウィールという地域。約2000平方キロメートルほどの台形の岩石砂漠だが、現在どの国も領有権を主張していない。積極的に領有を拒否している国さえあるという。

    場所愛、ありますか?『オフ・ザ・マップ』 - HONZ
  • 『黒幕』 - 最後の情報屋は、右と左と表と裏を制した男 - HONZ

    部数は1000部に満たないほど。月2回の発行で、購買料は法人120,000円、個人36,000円(年額)。一般の人にはほとんど知られていない情報誌を発行しているだけなのだが、マスコミ人の誰もに知られ、一流企業の重役たちがその元へと足繁く通う男がいた。 それが最後の情報屋ーー石原俊介。「兜町の石原」とも呼ばれた男は、情報を生業とする人間にとって必ず挨拶すべき人と位置づけられ、彼が発行する『現代情報産業』は、”プロ”だけが手に取る読み物であったという。 書は、2013年に亡くなった彼の知られざる半生を追いかけた一冊である。だがその半生は、世間を賑わせた経済事件歴史そのものでもある。撚糸工連、平和相銀、リクルート、イトマン、東京佐川、金丸脱税、ゼネコン疑獄…。 その種の事件の裏側には、必ず石原氏の痕跡が残されていた。 彼の特長は、「人脈交差点」という立ち位置の巧みさにあった。若い時分には共産

    『黒幕』 - 最後の情報屋は、右と左と表と裏を制した男 - HONZ
  • 『ものの言いかた西東』 - 大阪の空中殺法「よう、言わんわ」、東北の万能奥義「どうも」 - HONZ

    全国の津々浦々で使用される方言は、地方の特色を彩る大きな要素の一つである。アホとバカ、ショッパイとカライ、イルとオルといった言葉の違いは、我々の文化の多様性の一端を示しているとも言えるだろう。 一方で、それらの方言をフレーズ化して構成される「ものの言い方」については、その人の性格に依拠するところが大きいものと思われがちである。間接的なもの言いが多ければ回りくどい奴、必要最低限のことしか言わなければぶっきら棒な奴など…。ところが意外や意外、この言い回しというものにも、地域差が大きく関与しているらしい。 書は、ものの言いかたに表れる地域毎の違いから、それらを生み出した社会的な要因、さらには影響の連鎖や歴史的な側面にまで着目した一冊である。言語は思考を規定するように、ものの言いかたはコミュニケーションを規定する。引いては人間関係や商売上の結果にも大きな影響を及ぼすことだろう。いわばこれまで

    『ものの言いかた西東』 - 大阪の空中殺法「よう、言わんわ」、東北の万能奥義「どうも」 - HONZ
  • チャラめの美術好き・文学好きに読ませて反応をテストしてみましょう!バロウズ×ウォーホルの対談集 - HONZ

    20世紀の文学に強烈なインパクトを残し、『クラッシュ』で知られるJGバラードらのNWSF世代や、ロックシーンではニルヴァーナのカート・コバーンからも、深くリスペクトされているウィリアム・バロウズ。 現代美術に複製性の問題をセンセーショナルに持ち込み、アイドル的な芸術家というモデルをこれ以上ないくらい鮮烈に演じきったアンディ・ウォーホル。 今回とりあげる対談集『テープ』は、20世紀に生まれ20世紀に死んだ、この2人のアメリカ人が、それぞれの晩年に過ごした日々を捉えた対談集です。バロウズとウォーホルはだいたい10歳ほど歳が離れていますが、ともに1950年代から1960年代に花開いたビートニクとポップアートという文学・芸術の流行の中心にいた人物です。 今回の『テープ』は、このバロウズとウォーホルという2人が、それぞれの名声が確立された1980年代に、ニューヨークで知り合い、ルー・リードやミック・

    チャラめの美術好き・文学好きに読ませて反応をテストしてみましょう!バロウズ×ウォーホルの対談集 - HONZ
  • 無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ

    除草剤アトラジンをめぐる長年の論争がひとつの山場を迎えているようで、『ニューヨーカー』の2月10日号にホットなレポートが載っていました。アトラジンは日でも使われている除草剤でもあり、今後の成り行きが注目されます。 が、今回の記事はアトラジンの性質というよりもむしろ、医薬品や農薬などの安全性を調べている科学者が、その製品を製造販売している企業にとって好ましくないデータを出してしまったらどうなるのか--しかもそこに巨額の金が絡んでいるときには--という、われわれとして知っておくべき残念な事実に関するものでした。 除草剤アトラジンの問題は、両生類(とくにカエル)の内分泌学を専門とする、タイロン・ヘイズという研究者を抜きにしては語れないようで、『ニューヨーカー』の記事もヘイズを軸として展開されていました。 ヘイズは、サウスカロライナ州出身のアフリカアメリカ人で、彼が生まれ育った地域では、人口の

    無能な研究者のずさんな仕事……なのか?  除草剤アトラジン問題のゆくえ - HONZ
  • 『代替医療解剖』文庫版訳者あとがき by 青木薫 - HONZ

    稿は、2013年8月に文庫化された『代替医療解剖』の訳者あとがきです。2010年1月に刊行された単行『代替医療のトリック』の翻訳者あとがきはこちらから(※編集部) この文庫版のための訳者あとがきでは、書の単行が刊行されてからこれまでに起こった代替医療関係の出来事のうち、とくに興味深いと思われるものを2つほど取り上げてご紹介したい。 まず1つ目は、書の著者の1人であるサイモン・シンが、英国カイロプラクティック協会に名誉毀損で訴えられた一件である。2008年、書の原書がイギリスで刊行されるのに合わせ、シンは『ガーディアン』紙のウェブ版のコラムで、子どもの腹痛や喘息などを治療できるとして、子どもに施術しているカイロプラクターがいると述べた。 英国カイロプラクティック協会はそれに対し、シンの書き振りは、まるで協会の指導部がそれと知りつつインチキ療法を許しているかのように読め、事実上、協

    『代替医療解剖』文庫版訳者あとがき by 青木薫 - HONZ
    harapon1012
    harapon1012 2013/08/28
    真面目にいい話
  • 核兵器もコンピュータも、ここから生まれた - 『チューリングの大聖堂』 - HONZ

    期せずして、同じ時、同じ場所に、同じレベルの才を持つ者が集まると、想像を絶する出来事が起こることもある。 1953年、3つの技術革命が始まった。熱核兵器、プログラム内蔵型コンピュータ、そして、生命体が自らの命令をDNAの鎖にどのように保存するかの解明である。これら3つの革命は相互に絡み合い、その後の世界を大きく変えることとなった。 とりわけそれ以前から密接に結びついていたのが、熱核兵器とプログラム内蔵型コンピュータである。かつて数学と物理が相互に進化を促しあったように、両者はがっちりと手を組み、怪物のようなものをこの世に生み落としたのだ。 背景にあったのは、第二次世界大戦における反ナチスおよび、その後の冷戦構造による人材の集結である。アインシュタイン、オッペンハイマー、ゲーデル、チューリング、ファインマン。これらの錚々たるメンバーが、人種や学問の壁を越え、プリンストンの高等研究所を中心とす

    核兵器もコンピュータも、ここから生まれた - 『チューリングの大聖堂』 - HONZ
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