最近出版されたのは、アルゼンチン出身の政治学者、エルネスト・ラクラウ(1935~2014)の代表作「ポピュリズムの理性」(澤里岳史、河村一郎訳、山本圭解説、明石書店)と、ベルギー出身の政治学者でラクラウの公私にわたるパートナーでもあったシャンタル・ムフ(75)の「左派ポピュリズムのために」(山本圭、塩田潤訳、同)。これまで「大衆迎合主義」と訳されて批判されがちだったポピュリズムに新たな可能性を見いだし、積極的に政治に取り入れようとする姿勢が、両書に共通する。両書にかかわった山本氏は、ラクラウ/ムフ思想の研究者として知られる。 左派ポピュリズムは果たして、右派ポピュリズムと同じく混乱の要因なのか。それとも、政治に新たな可能性を切り開くのか。 ――今なぜ、この2人が注目を集めるのでしょうか。 エルネスト・ラクラウとシャンタル・ムフは、左派ポピュリズム運動から理論的支柱と見なされています。南米で