わたしはこの部屋で日々、わたしという役を生きている。登場人物はおもに、夫と犬と、わたし。演出、わたし。観客も、おもにわたし。ここは、芝居の稽古がない日のほとんどを家の中で過ごす、わたしによる、わたしのための舞台だ。このコラムは、そんなわたしの生活のありようを、月々の季節の風習とともに紹介するコラムです。理想を描いたリノベーションコラム『正直なすみか』その後、のおはなし。 干し柿を、干そうと思っていた。しかし干さなかった。これまでだって、一度も干したことはない。干し柿を干すのに適した季節は、11月頃だとインターネットに書いてあった。しかし、干し柿を干そうと思っていたことを忘れたまま、わたしの11月はなんとなく過ぎていった。ところで「干し柿を干す」は言葉としておかしい。干す前からもう干されたことになっている。「柿を干す」のほうが正しいのかもしれない。けれどもなんだか、「干し柿」は「干し柿」とし