文化人類学の一分野で,それぞれの文化における空間認識のあり方を,日常行動,居住空間,美術,文学などのうちに表現されたものを通して研究する。各文化は人対人,人対物,物対物の空間的関係について,意識的・無意識的に独自の認識枠組みを形成している。この研究分野は,個別文化におけるこの種の認識枠組みを明らかにするとともに,それらに比較文化論的検討をも加えようとするもので,アメリカの文化人類学者ホールE.T.Hallの1950年代の研究に端を発する。 たとえば日本文化において,畳の上の特定の位置に特定の姿勢で腰を下ろすことは,部屋の構造,家具の配置,同室内の他者の位置などとの関係によって,尊大,謙譲,不躾(ぶしつけ),恐縮その他,さまざまの意味を帯びてくる。これら人のとる姿勢・表情をも含めた空間的関係の意味の読み取りについては,文化の成員の間に共有された一種の文法が成立しているが,言葉において文法は普