政治と精神分析――過去・現在・未来 ヤニス・スタヴラカキス(山本圭訳) 政治的な精神分析――フロイト左派からラカン左派へ 多くの人々がこの連関に驚くだろうが,精神分析は,その始まりからして政治的であった.もとより,精神分析は認識論的な意味において政治的である.なぜなら,科学,理論,そして系統立てて行われる反省(systematic reflection)といったものは,つねに政治的に構築されてきたからだ.トーマス・クーンの言い方を用いれば,精神分析はひとつの科学革命を引き起こしたと言ってもよいだろう.つまり,精神分析は人間の経験がどのように構成され,どのように機能するのかについてのまったく新しいパラダイムを生み出したということだ.アルチュセール的なジャーゴンでいえば,それは同時に,みずからの研究対象を設定することで,「認識論的切断」をもたらしたのである.その研究対象こそ「無意識」にほかなら
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