●苦虫を噛みつぶしたような顔をした孤独な老人 昔、読んだマンガにアメリカ中西部の大学町に住む偏屈な医者が出てきて、いきなり「私は若いモンが嫌いだ」というセリフがあった。「傲慢で、ワガママで、自分勝手で、何をやっても許されると思っている…」というセリフを苦虫を噛みつぶしたような顔で言う。僕自身も若いモンだったのだが、その医者の言葉に何となく納得した。 しかし、次のコマではその町のカレッジの学生たちが「○○先生、○○お願いしまーす」とワイワイやってくるのを、その医者は破顔して迎えている。「そうはいっても、実際に若いモンに何かを頼まれると断れなくてね」と、学生たちを迎え入れながら医者は人のよさそうな笑顔でつぶやくのである。そんな言葉とは裏腹の情の深いキャラクターが僕の心に残った。 クリント・イーストウッドの「グラン・トリノ」(2008年)を見終わったとき、僕はそのアメリカ中西部に住む苦虫を噛みつ