江川紹子 これは、と思うオペラ公演は複数回鑑賞することがある。初日が終わった時には、「あと◯回見られる」と心にゆとりもあるが、いずれは楽日を迎える。感動的な公演であるほど、終わってしまうのが惜しくて、最後の一音にすがりつきたい気持ちになる。 二期会「ローエングリン」の最終日も、そうだった。 何と言っても、準メルクルさん指揮の東京都交響楽団の演奏が素晴らしかった。くめども尽きぬ泉からあふれだす音楽は、豊穣(ほうじょう)の海となってホールを満たし、歌い手たちの声と聞き手を包み込んでいく。幸福感に酔いつつ、この時が永遠に続いてほしいと願った。 歌い手陣も大健闘。力強い男声合唱にも感銘を受けた。中でも、とびきりの存在感を見せたのが、清水華澄さん演じるオルトルートだった。私は、本コラムで前回「ローエングリン」を取り上げた時に、オルトルートへの思い入れを告白したが、清水さんの歌と演技は、まさに私の“オ